作物吸収と相関の高い土壌カドミウム(Cd)の測定法
[要約]
土壌と抽出液の比率(土:液比)1:5、室温、30分の抽出条件で0.01M塩酸によって土壌から抽出されるCd(0.01M塩酸可溶性Cd)含量は豆類、麦類、野菜類等の可食部Cd含量と相関が高く、これら作物のCd含量の推定に利用できる。
[キーワード]
塩酸可溶性カドミウム、可食部カドミウム含量、マメ類、ムギ類、野菜類
[担当]北海道農研・生産環境部・上席研究官、土壌特性研究室
[連絡先]電話011-857-9232
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]科学・参考
[背景・ねらい]
既存の方法(酸分解法、0.1M塩酸抽出法)で求めた土壌Cd含量と作物可食部Cd含量の間にはほとんど相関がない。そこで、作物可食部Cd含量と相関が高い土壌可給態Cdの測定法を確立する。
[成果の活用面・留意点]
- 既存の方法より10倍薄い0.01M塩酸で抽出される北農研試験圃場土壌のCd量は、ダイズ子実Cd含量と相関が高く、有機物施用の有無等による差は無視できる(図1)。
- 北農研内のCd人工汚染土壌を用いた抽出条件の検討によれば、0.01M塩酸可溶性Cd含量は土:液比が小さい方が少ないが、30℃で抽出時間が1時間の場合を除き、抽出温度・時間の差が小さく(図2)、0.01M塩酸可溶性Cdの抽出条件としては土:液比1:5、室温(20〜30℃)、抽出時間30分が適している。
- 道内の一般農家圃場、東北農研の現地試験圃場・枠圃場から採取した土壌の0.01M塩酸可溶性Cd含量とダイズ子実Cd含量の間に正の相関が認められる(道内の例を図3に示す)。
- Cd人工汚染土壌で栽培したダイズ、インゲンマメ、アズキ、春まきコムギ、秋まきコムギ、チンゲンサイ、ホウレンソウ、コマツナ、ダイコンの可食部Cd含量においても土壌の0.01M塩酸可溶性Cd含量と高い正の相関がある(表1)。
- 以上のことから、上記条件で抽出される土壌のCd量は豆類、麦類、野菜類の可食部Cd含量と相関が高く、これら作物可食部Cd含量の推定に用いることができる。
[成果の活用面・留意点]
- ダイズ以外の作物はCd汚染土壌についての結果である。
- Cd含量はいずれも乾土あるいは乾物当たりで示してある。
[具体的データ]
[その他]研究課題名:作物吸収と相関の高い土壌交換性カドミウムの解明
課題ID:04-06-03-02-09-04
予算区分:高度化事業
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:吉田光二、杉戸智子
発表論文等:
1)木村・吉田・杉戸・山崎(2003)土肥誌78,493〜497
2)吉田・杉戸・木村(2003)土肥学会講要49:p174
3)吉田・杉戸・木村(2004)土肥学会講要50:p168
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