パン用秋まき小麦「キタノカオリ」に対する葉色診断と施肥対応


[要約] [キーワード] [担当]北海道農研・生産環境部・養分動態研究室、総合研究部・総合研究第1チーム
[連絡先]電話011-857-9243
[区分]北海道農業・生産環境、共通基盤・土壌肥料
[分類]技術・普及



[背景・ねらい] [成果の活用面・留意点]
  1. 止葉期までの22kg/10aの窒素施用により高収量は得られるが、必ずしも12%以上のタンパク質含有率は得られない。そこで、止葉期までは16kg/10a程度の施用とし、あとは穂揃期追肥に回す必要がある。16kg/10aの窒素施用で、窒素肥沃度の中庸な北農研圃場では12%以上のタンパク質含有率は得られず、一方、窒素肥沃度の高い北村圃場では12%以上のタンパク質含有率が得られる場合もある。したがって、施肥と土壌からの窒素を吸収した結果としての小麦の窒素栄養状態を穂揃期の葉色で診断し、追肥の判断をするのが望ましい(表1)。
  2. 穂揃期の葉色とタンパク質含有率との関係において、高収量の得られた2001年播種では同じ葉色値でタンパク質含有率は低いが、同年を除くと両者の相関は高く、葉色52以上のほとんどの処理でタンパク質含有率が12%を超える(図1)。
  3. 穂揃期の追肥によってタンパク質含有率は上昇する。葉色値が50未満では6kg/10aの追肥で、また、葉色値50〜52では3kg/10aの追肥でタンパク質含有率は12%を超える(図2)。
  4. 穂揃期追肥が十分吸収される条件として、それまでの窒素吸収が順調であることが必要である。一定以上の収量が得られた本試験の範囲から、穂揃期までの施用窒素量の少なくとも6割の窒素を吸収していることが必要と考える(表1)。穂揃期までの窒素施用量16kg/10aの場合、その6割は9.6kg/10aであり、穂揃期の窒素吸収量と葉色の関係(図3)から、葉色値としては44.9となる。さらに、本試験の範囲の穂揃期茎数(表1)が確保されている場合に、穂揃期追肥を行っても良いと考える。
  5. 以上より、穂揃期に展開第2葉の葉色を測定し、葉色値が52以上の時はそれ以上の追肥は行わない。一方、葉色値が50〜52の時は穂揃期に3kg/10a、50未満の時は6kg/10a程度の追肥を行う。本診断を適用する範囲として、穂揃期の茎数が460〜690本/m2(収穫期穂数440〜640本/m2)の範囲で、さらに穂揃期の葉色45以上の場合とする(表2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. この診断基準値は、道央の水田転換畑に適用する。
  2. 穂揃期の3kg/10aの追肥は2日、6kg/10aの追肥は4〜5日程度収穫日を遅らせる。
[具体的データ] [その他]
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