気象観測ロボット網を活用する250mメッシュの小麦成熟期予測マップ
[要約]
市町村レベルの面積内に複数配置される気象観測ロボットからのリアルタイムデータを使用して、250mメッシュ気象値(気温、相対湿度、降水量)を推定できる。気温のメッシュ値を使用すると小麦の成熟期推定マップが作成できる。
[キーワード]
気象観測ロボット、250m気象メッシュ、成熟予測マップ
[担当]北海道農研・生産環境部・気象資源評価研究室
[連絡先]電話011-857-9234
[区分]北海道農業・生産環境 共通基盤・農業気象
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
北海道芽室町の主要作物は小麦で、2003年の栽培面積は6,050haである。収穫コンバイン55台を共同利用するなど大規模機械化栽培体系が確立されている。品種が単一なので成熟期が集中する一方、成熟期頃は雨天日が多い。適期収穫しないと穂発芽・低アミロ小麦発生により品質低下する。収穫適期に達した圃場から順番に収穫機械を配置・運用する必要がある。そこで、町内8台の気象観測ロボットを活用して250mメッシュ気象値を推定して小麦成熟期予測マップを作成する。
[成果の内容・特徴]
- 数年間蓄積された気象観測ロボットデータを用いると、気象要素の値別(ランク別)に、地形因子からの気象値推定重回帰式を用意できる。その際、近傍アメダス(湿度については気象官署)との観測値比較から、地形因子解析に不適なデータを除外する。
- 任意の日のメッシュ気象値は次のように推定できる。
・ロボット観測値を取得する。全地点の観測平均値により、その日が属するランクを決定し、重回帰式を選択する。その日の属するランクのメッシュ値が得られる。
・ロボット観測地点について、上記ランクメッシュ値との残差を求める。各メッシュ地点について、上の残差を距離重みづけ法により配分する。
- 小麦(ホクシン)の成熟期は次のように推定できる。
・DVRモデルを作成する。北海道では融雪時期が発育の遅速に影響するが、融雪期の高精度推定はできない。そこで出穂期から計算開始するDVRモデルを使用する。
・現地で実施される生育生育調査から得られる出穂日データを使用して、未調査地点の出穂日を推定する重回帰式を作成し(年別)、全メッシュ地点の出穂期を推定する。
- 以上を統合すると、図1に示すフローにより250mメッシュ気象値の推定と、成熟期予測が行える。図2に示す成熟期マップを、出穂期の調査データが揃った時点から、日々更新して得ることができる。一連の作業を自動実行するアプリケーションが利用できる。
[成果の活用面・留意点]
- 日別日平均気温、相対湿度、日降水量と成熟期のメッシュ値の推定誤差は、RMSE(誤差の二乗平均)が0.3℃、2.9%、2.0mm、2.5日であった
- 気象ロボット地点より標高が高い、あるいは低い地点は補外推定になる。
- 未調査地点の出穂期を推定する重回帰式は、極めて生育が遅いなど生育異常を示す圃場のデータを使用せずに導出すること。
- アプリケーションは、チューニングと検証作業を行えば他地域へ移植できる。
平成16年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名及び区分
「先端技術を活用した小麦適期収穫システムの開発」(普及奨励)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:気象観測網データによる圃場別の収穫適期推定手法の開発
課題ID:04-06-05-*-08-04
予算区分:委託プロ 高度化事業
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者名:鮫島良次、濱嵜孝弘、廣田知良
発表論文等:鮫島ら、農業環境工学合同03大会講要.
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