秋まき小麦のタンパク質含量および糊化特性に基づく加工適性の評価
[要約]
秋まき小麦「ホクシン」は基本的には日本めん用であるが、その基準値を上回るタンパク質含量の高い生産物はパン用としての加工適性が向上する。また、最高粘度が低い低アミロの生産物は日本めん同様、パン用としての適性も劣る。
[キーワード]
[担当]中央農試・農産工学部・農産品質科
[連絡先]0123-89-2585
[区分]北海道農業・流通利用
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
日本めん用に利用されている秋まき小麦「ホクシン」の小麦粉品質と加工適性の関係を調査するとともに、栽培環境の影響によって、やむを得ずタンパク質含量が高くなった生産物をパン用として利用することの可能性について検討した。
[成果の内容・特徴]
- 小麦粉のタンパク質含量が高くなるのに伴い、製めん試験における麺帯色L*が低くなる(図1)。このことから、高タンパクの小麦粉から調整しためんの品質は劣る。
- 小麦粉のタンパク質含量が高くなるのに伴い、ファリノグラフ特性値のAb(吸水率)、DT(生地形成時間)、Stab(安定度)およびVV(バロリメーターバリュー:生地特性の総合評価値)が高くなり、Wk(弱化度)が低くなる(表1)。これらの変化の方向は、パン用小麦の生地物性の評価が高くなる方向と同様である。
- 小麦粉のタンパク質含量が高くなるのに伴い、パン比容積が高くなる(図2)。パン比容積とクラム硬さの間には負の相関関係、パン比容積とクラム弾力性の間には正の相関関係がある。タンパク質含量が高い小麦をパン用に利用した場合、良く膨らんだパンとなり、そのクラムもソフトで弾力性があることから、このような小麦の製パン性はパン用小麦に近づく傾向にある。
- RVA最高粘度が約400RVUの小麦粉と比較して、最高粘度が約150RVUおよび約250RVUのものはパン比容積が高い(図3)。約400RVUのものと比較して、約250RVUのクラム弾力性は同程度であるが、約150RVUのクラム弾力性は低い(図4)。パン比容積およびパン品質から判断して、最高粘度が約400RVUのものに比べ約250RVUの製パン性は同程度、約150RVUの製パン性は劣る。
[成果の活用面・留意点]
- 生産現場では適正なタンパク質含量の小麦生産を目指すことが前提である。本成績は、基準値を超える高タンパク小麦が生産された場合に、流通、利用の場面で用途を検討する際の参考となる。
- 本成績は秋まき小麦「ホクシン」を対象としたものである。
平成16年度北海道農業試験会議における課題名および区分
課題名:秋まき小麦のタンパク質含量と糊化特性に基づく加工適性(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:大規模収穫・調製に適した品質向上のための小麦適期収穫システム
予算区分:外部資金
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:奥村 理、加藤 淳
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