トラクタ搭載型センサを用いた可変追肥による秋まき小麦の圃場内生育変動軽減


[要約] [キーワード] [担当]中央農試・生産システム部・機械科
[連絡先]電話01238-9-2287
[区分]北海道農業・総合研究
[分類]技術・普及



[背景・ねらい] [成果の内容・特徴]
  1. 秋まき小麦「ホクシン」の幼穂形成期における窒素吸収量と最終的な子実窒素吸収量には正の相関があり、幼穂形成期の窒素吸収量の差が概ね子実窒素吸収量の差に反映する(図1)。幼穂形成期の窒素吸収量は供試センサの値(YARA社製、N-sensorの出力値:以降SVとする)といずれの圃場においても相関が高く、幼穂形成期のSVの差1は概ね窒素吸収量の差1.5kg/10aに相当する。また、幼穂形成期追肥の施肥効率は最大で80%程度であることから、圃場内の窒素吸収量の差を平準化するためには、各圃場において基準点(平均的な生育箇所もしくは平年的な生育箇所)のSVに慣行施肥量を設定し、SV1の変化に対して追肥増減量を2kg/10a程度にして可変追肥を行う。
  2. 出穂期におけるSVと秋まき小麦「ホクシン」の子実蛋白含有率には圃場ごとに高い正の相関があり、いずれの圃場においてもSVの差4(SPAD値の差8に相当)に対し子実蛋白含有率が概ね1%異なる(図2)。また、出穂期の追肥による子実蛋白含有率の上昇程度は窒素1kg/10aにつき概ね0.2〜0.3%であることから、圃場内の子実蛋白含有率を平準化するためには各圃場において基準点(平均的な生育箇所もしくは平年的な生育箇所)のSVに慣行施肥量を設定し、SV1の変化に対して追肥増減量を1kg/10a程度にして可変追肥を行う。
  3. トラクタ搭載型センサと可変式ブロードキャスタの組み合わせで実施した実証試験の結果、幼穂形成期の可変追肥は圃場内の収量を平準化することができる(表1、収量はコンバインに搭載した収量センサにより1秒間隔で計測)。また、生育量が同程度の区で比較すると、可変追肥区では減収させずに定量追肥区より幼穂形成期の窒素追肥量を0.8〜1.8kg/10a(10〜31%)減少できるとともに倒伏の軽減を図ることができる。
  4. 出穂期の可変追肥は圃場内の子実蛋白含有率を平準化することができる(表2)。
  5. 以上のことから、可変追肥は圃場内の倒伏軽減や収量、子実蛋白含有率の平準化に有効である。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本技術は現在実施している追肥体系(時期、量)をもとに圃場内の生育ムラを軽減する技術として活用する。
  2. 1. 本技術は圃場内の生育ムラが窒素栄養条件の差に起因する場合に利用でき、排水不良、病害の発生、または微量要素欠乏などによる生育不良箇所には適用しない。


  3. 平成17年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分 「トラクタ搭載型センサを利用した窒素可変追肥による秋まき小麦の圃場内生育変動の軽減対策」(指導参考)
    [具体的データ] [その他]
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