放射暖房による園芸施設内の温度環境の特徴と作物の生育
[要約]
放射暖房であるハロゲンヒータおよび遠赤外線ヒータによって園芸施設を暖房すると、気温は温風ヒータよりも低くなるが地温は高くなる。ハロゲンヒータで暖房したホウレンソウ、遠赤外線ヒータで暖房したシソは温風ヒータよりも優れた初期生育を示す。
[キーワード]
放射暖房、園芸施設、環境制御、コジェネレーションシステム、野菜
[担当]北海道農研・総合研究部・農地農業施設研究室
[連絡先]電話011-857-9233
[区分]北海道農業・総合研究
[分類]科学・参考
[背景・ねらい]
放射暖房は、空気ではなく対象物を直接暖めるという点で省エネルギー的であると考えられる。しかし、現状では園芸施設にはほとんど利用されていない。一方、近年北海道ではコジェネレーションシステムを備えた家畜ふん尿利用のバイオガスプラントが増加しており、発生する電気の合理的かつ有効な利用方法を検討する必要が生じている。バイオマスタウン構想を掲げる自治体ではコジェネにより発電された電気を園芸施設の暖房に利用する計画を持つところもある。放射暖房は電気を利用すれば容易であるため、実用技術として採用される可能性は小さくない。そこで、放射暖房による園芸施設の温度環境の特徴および作物の生育について他の暖房方法と比較することにより検討した。
[成果の内容・特徴]
- 二重被覆した面積7.2uのハウスを約900Wの消費電力で連続的に夜間暖房(17:00〜7:00)した場合(図1)、作物に近い地上10cmの気温は温風ヒータが最も高く、次いでハロゲンヒータ、遠赤外線ヒータ、温床線の順になる(図2)。外気温との気温差は温風ヒータで約15℃、ハロゲンヒータで約13℃、遠赤外線ヒータで約12℃、温床線で約8℃である。
- 地下20cmまでの地温を含めた温度の垂直分布は温風ヒータで最も均一となり、温床線で最も大きな勾配を示す。放射暖房であるハロゲンヒータおよび遠赤外線ヒータでは、気温が温風ヒータ区よりも2〜4℃低くなる一方、地温は1〜2℃高く推移する(図2)。
- 対象作物をホウレンソウ、サラダ菜、シソとし、札幌の3〜4月(平均外気温3℃)で栽培を行った場合、ハロゲンヒータで暖房したホウレンソウ、遠赤外線ヒータで暖房したシソは温風ヒータよりも優れた初期生育を示す。サラダ菜の生育については暖房方法による違いはほとんどない(表1)。
- 放射暖房は地温と同様に葉面温度を直接上昇させようとする作用を持つが、ホウレンソウの葉面温度は地上10cm気温と同様の順位となる。すなわち、温風ヒータでは7〜14℃、ハロゲンヒータと遠赤外線ヒータでは6〜10℃、温床線で5〜9℃程度である。放射暖房が温風ヒータよりも優れた生育を示す場合がある理由は、植物体の温度上昇によるものではなく、地温が高いことや、ハロゲンヒータでは熱とともに光が発生することによる(図省略)。
[成果の活用面・留意点]
- 温度制御を行った実験ではなく消費電力を一定に制御した夜間暖房実験から得られた結果である。
- ハロゲンヒータを用いる場合にはホウレンソウの抽台に留意する必要がある。また、ハロゲンヒータを用いた場合には葉色の薄いホウレンソウとなる。
[具体的データ]
[その他]
コージェネシステム利用の寒地ハウスにおける環境制御の安定化技術の開発
予算区分:交付金
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:佐藤義和、向 弘之、松田 周
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