農家チーズ工房の経済性と発展方向


[要約] [キーワード] [担当]根釧農試・研究部・経営科
[連絡先]電話0153-72-2004
[区分]北海道農業・総合研究
[分類]技術・普及



[背景・ねらい] [成果の内容・特徴]
  1. 農家チーズ工房を導入する酪農経営は、経産牛頭数が40頭近辺に多い。なかでも農家チーズ工房に対して所得を確保する部門としての意識を強く持つ経営は、労働力が4人以上あり、農家チーズ工房に専任の従事者を配置して農家チーズの生産量をより多くし、販売面でも個人客を確保している。(図12
  2. 経産牛40頭の酪農経営が後継者を確保し家族労働力4人と余裕あるケースを前提に比較した。農家チーズ工房を所得を確保する部門として導入する酪農経営では、農家チーズ工房導入に要する投資額が約2,000万円になり、これは酪農専業経営の経産牛40頭程度と60頭程度の農業固定資本額の差とほぼ同じ値になる。そして経産牛が40頭と60頭の農業所得の差は350万円である。
    農家チーズ工房の目標所得水準をこの350万円と設定したとき、専任労働力1人と補助労働力1人を確保し、少なくとも原料乳数量で20-30t程度、100g単価450-350円程度、販売額で900-1,000万円程度確保することが目安となる。(表1
  3. 上記の経産牛頭数と家族労働力の条件に合う事例のトレースから、酪農(第一次産業)を経営の基軸に、加工業(第二次産業)である農家チーズ工房の経済性を意識し、労働力の増加により農家チーズを増産し、中間マージンを省いてニーズ把握も直接行い販売を強化するため小売業(第三次産業)を経営内に取り込む過程を確認した。
    すなわち、図12と事例のトレースを踏まえると、農家チーズ工房の発展方向としては、エンドユーザーであるお客(消費者)との距離を近づけていく垂直的多角化と想定される。(図3
  4. 上記の事例のトレースから発展方向を進む上での課題を技術習得、販売・経済性、経営全般について抽出し課題解決方法を考察し整理すると、農家チーズ製造の技術指導体制の整備、お客を確保するため地域内のグリーン・ツーリズム実践者との連携など関係構築、ファミリーサイクル(家族労働力の世代交代)への対応のため雇用労働力の導入が重要と考えられる。(表2
[成果の活用面・留意点]
  1. 経産牛頭数40頭程度で労働力に余裕のある家族経営に対して、今後の経営を進める上で選択肢のひとつとして示す参考資料となる。

    平成17年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
    「農家チーズ工房の経済性と発展方向」(指導参考)
[具体的データ] [その他]
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