ダイズの主要な裂莢性遺伝子座のゲノム上の座乗位置
[要約]
ダイズ品種「ハヤヒカリ」に由来する主要な難裂莢性遺伝子は、分子連鎖群JのSSRマーカーSat_366近傍に存在する。
[キーワード]
ダイズ、機械収穫適性、難裂莢性、マーカー育種、QTL解析
[担当]]北海道農研・地域基盤研究部・冷害生理研究室
[連絡先]電話011-857-9312
[区分]北海道農業・基盤研究、作物・生物工学、作物・夏畑作物
[分類]科学・参考
[背景・ねらい]
近年ダイズ栽培において機械化収穫が普及し、それに適した品種の育成が求められている。北海道では、早くからその対応が求められ、優良な難裂莢性品種の育成に成功しているが、本州以南では、十分な難裂莢性を示す主要品種はない。北海道の品種を含む遺伝資源から難裂莢性遺伝子の導入が試みられてきたが、成熟期や粒大など他の形質での問題があり、大きな進展がみられていない。そこで、北海道で育成された難裂莢性品種「ハヤヒカリ」と、易裂莢性品種「トヨムスメ」の交雑後代の組み換え型自殖系統(RIL)について、裂莢性検定とDNAマーカーによるジェノタイピングを行うことで、裂莢性に関する遺伝子座(QTL)を同定し、難裂莢性育種の効率化に資することを目的とする。
[成果の内容・特徴]
- F6:8のRILsにおいて圃場での裂莢性に関する広義の遺伝率は、0.8を上回る。
- 圃場での裂莢性に関してQTL解析を行うと、分子連鎖群JのSSRマーカーSat_366近傍にLOD値13.8、寄与率52%の効果の大きなQTLが同定される(図1)。
- 人工気象室で栽培した植物体についても、同様の位置に効果の大きなQTLが同定される(図1)。
- 「トヨムスメ」と同様な熟性遺伝子型を示し、前述の裂莢性に関するQTL付近が「ハヤヒカリ」型のRILを「トヨムスメ」に戻し交雑して得たF2集団では、Sat_366の遺伝子型が「ハヤヒカリ」型のものが、ヘテロ型や「トヨムスメ」型のものに比べ、顕著に裂莢耐性に優れる(図2)。
- 裂莢性に関するQTLに連鎖するSSRマーカー(最も近いSat_366と二番目のSat_093)において、「ハヤヒカリ」の難裂莢性遺伝子の供与祖先であるタイ品種「SJ-2」及びその後代の難裂莢性品種・系統は、Sat_093での1つの例外を除き同じ対立遺伝子型を示し、アメリカの難裂莢性品種や国内の易裂莢性品種の対立遺伝子型と区別される(図3)。
[成果の活用面・留意点]
- 難裂莢性育種のための情報となる。
- Sat_366およびSat_093は難裂莢性の選抜マーカーとして利用でき、特に戻し交雑での選抜に有効である。
- SSRマーカーはUSDAで開発されたものであり、WEB上で配列情報が公開されている(http://129.186.26.94/ssr.html)。
[具体的データ]
[その他]
ダイズの耐冷性に関するDNAマーカーの高精度化
予算区分:DNAマーカー
研究期間:2005〜2006年度
研究担当者:船附秀行、石本政男、川口健太郎(現・技術会議)、辻博之、羽鹿牧太(作物研)、藤野介延(北大院農)
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