コムギのR遺伝子座が穂発芽耐性関連遺伝子の発現に及ぼす影響


[要約] [キーワード] [担当]北海道農研・地域基盤研究部・適応生態研究室
[連絡先]電話011-857-9211
[区分]北海道農業・基盤研究、作物・生物工学、作物・冬作物
[分類]科学・参考



[背景・ねらい] [成果の内容・特徴]
  1. 新規白粒系統M-12への戻し交配後代では白粒変異が独立2因子で劣性に遺伝する(表1)。また、M-12とR遺伝子座が白粒型の系統(Egret、タマイズミ)とのF1(F2種子)が全て白粒である。これらの遺伝解析から、M-12はゼンコウジコムギのB、Dゲノムの相同な座位にあるR遺伝子座の変異による白粒変異系統である。このM-12及び得られた戻し交配白粒系統W1-6の穂発芽耐性は原品種ゼンコウジコムギより低い(図1)。
  2. M-12では、種皮色生合成に関わるフラボノイド生合成遺伝子F3HとDFRの発現量が著しく少ない(図2)。従って、R遺伝子座は、種皮色生合成系の一遺伝子をコードしているのではなく、複数の遺伝子を制御している。
  3. M-12とW1-6では、ABA情報伝達系穂発芽耐性関連遺伝子TaVP1, TaABI5, PKABA1およびこれらの遺伝子により制御されるABA応答性遺伝子Emの発現が原品種より低下する(図3)。従って、R遺伝子座の変異は、種皮色を白にするだけでなく、これらのABA応答に関連する穂発芽耐性関連遺伝子の発現も低下させる。
  4. 以上の結果から、M-12とW1-6では、TaVP1, TaABI5, PKABA1の発現低下がABA感受性に影響を与え、穂発芽耐性レベルの主な決定要因である種子休眠性を低下させている可能性が高い。
[成果の活用面・留意点]
  1. R遺伝子座によるABA情報伝達系穂発芽耐性関連遺伝子の発現制御機構の解明に資することができる。
  2. R遺伝子座がどのようにF3H、DFR、TaVP1、TaABI5、PKABA1及びEmの発現に関わるかは未解明である。
[具体的データ] [その他]
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