秋まき小麦「キタノカオリ」の低アミロ耐性
[要約]
「キタノカオリ」は登熟中期の低温条件により成熟期のα−アミラーゼ活性が高まりやすく、成熟期以降の低アミロ耐性も「ホクシン」より低いことが明らかとなった。
[キーワード]
α−アミラーゼ活性、気象条件、コムギ、キタノカオリ、フォーリング・ナンバー
[担当]十勝農試・生産研究部・栽培環境科、中央農試・作物開発部・畑作科
[連絡先]電話0155-62-9829
[区分]北海道農業・作物
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
適期に収穫された「キタノカオリ」で、高α−アミラーゼ活性・低フォーリング・ナンバーとなる事例が認められることから、その要因および本品種の低アミロ耐性(穂発芽およびα−アミラーゼ活性)を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 平成13〜17年に全道53地点について、成熟期に「キタノカオリ」試料を採取した結果、平成15年の十勝農試他6地点において、穂発芽は認められないが低アミロ化した事例が認められた。しかし、他の年次や「ホクシン」ではそのような現象は認められていない(図1)。十勝地域において成熟期で低アミロ化した事例では、充実不良の子実(しいな粒)でα−アミラーゼ活性が高い傾向が認められる(図2)。
- 成熟期前の気象条件と成熟期のフォーリング・ナンバーとの関連を検討した結果、降水量(降雨指数)、日照時間との相関は低く、全般に平均気温との間に正の相関(r=0.35*〜0.64**、*は5%水準で有意、**は1%水準で有意)が認められる。特に、成熟期前4週間の平均気温とはr=0.64**(n=52)の比較的高い正の相関が認められ、17℃程度以下でフォーリング・ナンバー300以下の試料が発生している(図3)。
- 3.登熟期人工気象処理試験の結果、「キタノカオリ」では成熟期前約3週間の低温条件(平均気温15℃)で、成熟期直後のα−アミラーゼ活性がやや高い傾向であるが、1週間後には正常域まで低下する(表1)。同期間の高温条件(平均気温20℃)や成熟期前約1週間の低温条件では、成熟期の高α−アミラーゼ活性現象は認められず、「ホクシン」においてはいずれの温度処理・採取時期においてもα−アミラーゼ活性は低く維持されている。
- 成熟期以降の降雨処理試験の結果、「キタノカオリ」は「ホクシン」よりも低アミロ化危険降雨日数の年次変動が大きく、また「ホクシン」よりも低アミロ化しやすい(図4)。
- 以上のことから、「キタノカオリ」は登熟中期の低温条件により成熟期のα−アミラーゼ活性が高まりやすく、成熟期以降の低アミロ耐性も「ホクシン」より低いことが明らかである。
- 「キタノカオリ」においては収穫適期を判断するためおよび仕分け収穫・流通を行うために、成熟期以降の圃場試料および収穫物に対するα−アミラーゼ活性のモニタリングが有効と考えられる。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は「キタノカオリ」を作付けするにあたって、低アミロ小麦の発生リスクを認識する上で有効な情報である。
平成17年度北海道農業試験会議成績会議における課題名および区分
「秋まき小麦「キタノカオリ」の低アミロ耐性」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
「キタノカオリ」の低アミロ特性現地実態調査
予算区分:受託
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:中津智史、佐藤康司、佐藤仁、神野裕信
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