パン用小麦のSDSセディメンテーションとSKCS硬度の遺伝率
[要約]
軟質小麦と硬質小麦の交配集団では、パン用小麦の少量選抜法であるSKCS硬度はタンパク含量よりも遺伝率が高く、特にSDSセディメンテーションは下方向への遺伝率が高い。
[キーワード]
小麦、SDSセディメンテーション、SKCS硬度、遺伝率、選抜方向
[担当]北海道農研・畑作研究部・麦育種研究室
[連絡先]電話0155-62-9210
[区分]北海道農業・作物、作物・冬作物
[分類]科学・参考
[背景・ねらい]
パン用小麦の製パン性の選抜指標として、タンパク含量、SDSセディメンテーション、単一穀粒分析装置(SKCS)によるSKCS硬度(穀粒硬度)があるが、これらの指標を組み合わせた選抜効果の報告はない。最適なパン用小麦の選抜法を明らかにするために、遺伝率に対する選抜方向(上方向、下方向)と親品種の硬軟質性を決定するピュロインドリン遺伝子型の影響を、硬軟質性が異なる2組合せのF3、F4集団を用いて解析する。
[成果の内容・特徴]
- SKCS硬度とSDSセディメンテーションは比較的高い遺伝率を示し、タンパク含量の遺伝率は低い(表1、2)。
- SDSセディメンテーションは上方向の遺伝率よりも下方向の遺伝率が高い値を示し、SKCS硬度は本組合せでは1遺伝子支配なので両方向で同様の遺伝率を示す(表2)。
- SKCS硬度とタンパク含量は、ホクシン集団で高い遺伝率を示すが、SDSセディメンテーションの遺伝率に対する親品種のピュロインドリン遺伝子型の影響は少ない(表2)。
- SDSセディメンテーションとSKCS硬度の相関係数は高くない(表3)。
- 以上より、親品種のピュロインドリン遺伝子型に関わらず、SDSセディメンテーションによる選抜は、製パン性が劣る系統の足切り選抜に適している。両指標をそれぞれ用いることにより、効率的なパン用小麦の選抜に有効である。
[成果の活用面・留意点]
- パン用小麦の少量選抜法の遺伝率が明らかになり、サンプル量が少ない早期世代からの選抜に活用できる。
- 今回の結果は、めん用小麦を交配親の一部に使った集団を用いた解析である。
[具体的データ]
[その他]
北海道に適応する超強力・強力(硬質)秋播小麦品種の開発
予算区分:異分野融合研究
研究期間:2001〜2005年度
研究担当者:西尾善太、高田兼則、池田達哉(近中四農研)、藤田由美子(近中四農研)、伊藤美環子、田引正、船附(丸山)稚子、山内宏昭、入来規雄
発表論文等:Nishio et al. (2005) Breed. Sci. 55: 303-310
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