初乳への無機セレンの添加は子牛への免疫グロブリン移行を高める。
[要約]
初乳に亜セレン酸ソーダを添加すると、初乳中の免疫グロブリンG(IgG)の子牛血中への移行率が高まり、血中免疫グロブリン濃度が高まる。無添加との濃度差は2週間程度持続する。また同時に血中セレン濃度も上昇することから、新生子牛に不足している必須ミネラルであるセレンも補給できる。
[キーワード]
[担当]北海道農研・畜産草地部・生理繁殖研究室、上席研究官
[連絡先]電話011-842-5340
[区分]北海道農業・畜産草地、畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
新生子牛は自前の免疫システムが未熟であるため、疾病に対する抗病性はもっぱら母牛の初乳由来の免疫グロブリンに依存している。その吸収能力は生後24時間以内に限られ、その時間内に良質で充分な量の初乳を与える事が子牛の健全な生育に重要である。しかし生産現場では様々な理由で上記の条件が満たされない場合がみられ、子牛の損耗率は依然低減していない。本成果は初乳吸飲量が充分でない場合に免疫グロブリン移行を高めることを目的とした技術であり、これまでに知られていない作用機序に基づく。
[成果の内容・特徴]
- 体重差2.5 kg以内のホルスタイン種子牛のペア(31組)に同量・同質の初乳(IgG濃度:24.3~129.0mg/ml)を生後2.5時間以内に与える条件下で、一方の初乳に亜セレン酸ソーダを添加すると、生後24時間の子牛血漿中免疫IgG量が上昇する。その上昇率は最大効果の見られるセレン添加濃度(3 ppm)で平均42%である。(図1)。
- 初乳へのセレン添加でもたらされた血漿中IgGの対照区に対する濃度差は2週間程度持続する。(図2)
- セレン添加により血漿中のセレン濃度も同時に高まり(図3)、この技術により低セレン状態で生まれてくる子牛へのセレン補給も可能になる。
- 血液の一般生化学検査ではセレン添加による差は見られない。
- 子牛の血漿中IgG濃度を上昇させる方法として、本技術はこれまでにない免疫グロブリンの吸収率を上昇させる方法である。
[成果の活用面・留意点]
- 本技術はすでに流通している凍結初乳あるいは初乳代替物に応用できる。また初乳添加物としての商品化も可能と考えられる。
- 現在国内では、亜セレン酸ソーダは飼料添加物としては認可されていない。
- セレンの最適添加濃度についてはさらに例数を増やして検討する必要がある。
[具体的データ]
[その他]
微量ミネラルの機能を利用した乳牛の新飼養技術の開発
予算区分:交付金
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:鎌田八郎、野中最子、上田靖子、村井勝
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