画像解析を用いた牛枝肉品質の高精度計測システム
[要約]
枝肉横断面撮影装置と画像解析ソフトウエアからなる牛枝肉品質の高精度計測システムを開発し、その肉質情報をフィードバックする体制を構築した。これにより客観的で精細な肉質情報を得ることができ、生産現場等において、品質や技術向上の有効な手段となる。
[キーワード]
枝肉横断面画像、撮影装置、画像解析、肉用牛、肉質、データベース
[担当]道立畜試・家畜生産部・育種科、道立工試、帯畜大、早坂理工
[連絡先]電話0156-64-5321
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
牛枝肉横断面の高精細画像を撮影し、高精度な品質評価を実現する牛枝肉品質計測システムを開発する。さらに、開発された計測システムを用いて得られる枝肉品質情報の育種改良等への有効性を検討すると同時に、これらの情報を生産者にフィードバックする体制を構築する。
[成果の内容・特徴]
- 試作した枝肉横断面の改良型撮影装置は、従来型撮影装置と比較して約2倍の撮影面積、約6倍の解像度の高精細広視野画像を撮影できる。これは枝肉の格付けに重要な部分の画像を一回の撮影で取得することを可能とする(表1)。
- 開発した実用型撮影装置(ミラー式薄型撮影)は、ミラーを用いた機構の採用により、改良型撮影装置を薄くし、その全高が約23cm(ただし枝肉挿入部のみ)である。これにより、一般枝肉市場で多く見られる切開幅の狭い枝肉に対しても横断面画像の撮影が可能となる(表1および図1)。本装置には、レーザ輝線を用いた傾き検出機構を搭載している。
- 枝肉画像解析ソフトウエアは、現行の格付項目には含まれていない脂肪面積比やロース芯形状、脂肪交雑粒子のあらさ等についても評価を可能とする(図2)。また、枝肉横断面の画像解析による脂肪交雑(BMSナンバ)推定値と格付値との一致率は74.2%、誤差±1以内は98.3%であり、従来型撮影装置と比べ、一致率は22.8%向上する(表2)。
- 本システムは、脂肪交雑粒子のあらさやロース芯形状について数値化することを可能とし、その情報は種雄牛造成における選抜指標として有効である。また、脂肪交雑に関するQTL(量的形質遺伝子座)解析の結果、BMS ナンバと関連の高い脂肪面積比において高度に有意なQTLが検出され、QTL解析においても有効と考えられる。さらに、牛肉の美味しさに関係のある筋肉内脂肪中のモノ不飽和脂肪酸割合を推定できる可能性がある。
- 構築した枝肉画像データベースは、生産者にその肉質情報をフィードバックできる。
[成果の活用面・留意点]
- 本システムより得られる情報は、育種改良等より精細で客観的な情報が必要な場面において、特に有効である。
- これらの情報を生産者にフィードバックし、今後の肥育生産に活用してもらうことで技術ならびに枝肉品質の向上が期待される。
平成17年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「画像解析を用いた牛枝肉品質計測システムの開発」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
画像処理を用いた牛枝肉品質自動計測装置の開発
予算区分:重点領域特別研究
研究期間:2003〜2004年度
研究担当者:宝寄山裕直、藤川 朗、森井泰子、竹田芳彦(道立畜試)、堀 武司、波 通隆、本間稔規、長尾信一(道立工試)、口田圭吾、高橋健一郎、浜崎陽子、大澤 剛、平山由子、瀬脇 巧(帯畜大)、小森仁重、大森哲也(早坂理工)br>
発表論文:1)口田ら(2005)肉用牛研究会報,80:56-62
2)口田ら(2004)日本畜産学会報,75:573-579
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