代用乳の増給で黒毛和種子牛の発育を高める
[要約]
自動哺乳装置による代用乳の給与日量を4lから6lへ高めることにより子牛のスターター摂取開始は2週間程度遅れるが、子牛の発育に負の影響はなく、むしろ哺育期の増体は向上し、300日齢補正体重で10kg以上高まる効果がある。
[キーワード]
[担当]道立畜試・家畜生産部・肉牛飼養科、畜産工学部・感染予防科
[連絡先]電話0156-64-5321
[区分]北海道農業試験研究・畜産
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
哺乳ロボットを用いた黒毛和種の哺育プログラムは、代用乳の給与日量を4lとするのが一般的であったが、多回給与が可能なため、給与日量を4lより高める事例も見られるようになってきた。しかし、代用乳の給与日量を高めることが黒毛和種子牛の発育等におよぼす影響は明らかにはなっていない。そこで代用乳の給与量の違いが黒毛和種子牛の発育等に及ぼす影響を調べた。
[成果の内容・特徴]
- 2カ月齢(60日齢)で離乳するまでの日増体量(DG)は、代用乳の4l区(1日4回ほ乳、1l/回給与)より6l区(1日4回ほ乳、1.5l/回給与)の方が高くなる(表1)。
- 代用乳を6l給与した子牛は、スターターの摂取が2週間程度遅れる(図1)。代用乳給与日量を4lから6lへと高めると発育は向上するがスターターの摂取総量は抑制される。しかし2カ月齢になるとスターター摂取量は1kgを超えているため、十分離乳可能な量に達する。下痢などの疾病はあっても軽微で、発育に影響するような重篤な症状には到らなかった。
- 離乳後の育成期における日齢体重は、6l区では1kgを超えたのに対して4l区では1kgに満たない(表2)。300日齢補正体重でみると、6l区では4l区より平均で10kg以上大きくなることが期待できる。6l区では、スターターの摂取開始が遅れる傾向にある(図1)が、60日齢では1kgを超える量を摂取しており、十分離乳可能な量に達する。
- 代用乳の給与日量を4lから6lまで高めると、哺乳期間中に消費する代用乳は約20kg増加し、反対にスターター摂取量は10kg低下する。したがって哺乳期間の飼料コストは、4l哺乳より一頭あたり6,500円(代用乳価格を3,500円/10kgとし、スターター価格を1,000円/20kgとして試算)だけ増加する。
- 1日4回ほ乳(1回あたり1.5l給与)の条件で、自動哺乳装置で黒毛和種子牛を哺乳するために推奨されるプログラムは図2に示すとおりである。
[成果の活用面・留意点]
- 哺乳期間中の乾草とスターターは自由採食とし、離乳は60日齢で行う。
- スターターの摂取促進などを目的に、離乳前の代用乳給与量を漸減すると発育向上効果は現れなくなるため、離乳まで6l 給与を継続する。
- 本成果は、自動哺乳装置を利用して黒毛和種子牛を哺育する農場で利用する。
- 5日齢までは、ゴムニップルや代用乳へ馴致するためカーフハッチ等で哺乳する。
平成17年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「黒毛和種哺育子牛の発育改善技術」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
黒毛和種哺育子牛の発育向上技術の確立
予算区分:民間共同
研究期間:2001〜2004年度
研究担当者:杉本昌仁、八代田千鶴、齋藤早春、小原潤子、佐藤幸信、斉藤利朗
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