同時拍動方式搾乳装置の特性
[要約]
新たに開発された同時拍動方式搾乳装置は、搾乳サイクル中の休止期における乳頭先端真空度が、交互拍動方式よりも低下する。乳頭先端に目立った変化は現れず、搾乳能率は1ユニットあたり3.4〜4.1頭/hと一般的な数値であり平均搾乳速度に差がみられないことから、既存の搾乳システムと同様に利用できる。
[キーワード]
[担当]根釧農試・研究部・酪農施設科、乳質生理科
[連絡先]電話0153-72-2004
[区分]北海道農業・総合研究
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
パイプラインミルカの拍動方式のうち、交互拍動方式搾乳装置は、搾乳中の真空度変動が小さくなるように設計されており、搾乳サイクル中の搾乳期とほぼ同じ真空度が休止期にも乳頭先端に作用する。一方同時拍動方式搾乳装置では、休止期に乳頭先端真空度が低下して乳頭先端に作用する圧力が低くなるので、交互拍動方式と比べてシステム真空度を高く設定することができ、平均搾乳速度が増加して搾乳時間が短縮するといわれている。本試験では、新たに開発された同時拍動方式搾乳装置について、模擬搾乳試験により同時拍動方式と交互拍動方式での乳頭先端真空度変動の違いを明らかにするとともに、乳牛を用いた搾乳試験を実施して乳頭先端への影響や搾乳時間などを調査して、その特性と利用性を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 模擬搾乳装置を用い、同時拍動方式による搾乳サイクル休止期の乳頭先端真空度の低下を交互拍動方式と比較すると、システム真空度は48.2kPa(同時拍動)、44.1kPa(交互拍動)であるが、乳頭先端真空度はそれぞれ30.1kPa、41.7kPaと同時拍動方式の方が低く、低下の度合いも大きい(図1、表1)。
- 牛床からの生乳持上げ高さ2360mm、システム真空度50kPaで実施した場内搾乳試験では、試験開始当初から前処理時と搾乳時の蹴り、乳頭表面のうっ血がみられ、うっ血は試験終了時まで継続するが、搾乳時の蹴りは2週間程度で終了する。乳頭先端部の観察による乳頭先端スコアは、試験前115日間の交互拍動方式搾乳により1〜2に達している初産の供試牛(753)において試験期間中にはそれ以上のスコア上昇がみられないことや、その他の牛についても乳期の進行に伴うスコア1〜2の変化の範囲内であることから、同時拍動方式での搾乳による乳頭先端への影響は交互拍動方式と同程度である(表2)。
- 導入農家の搾乳システムは、生乳持上げ高さが750〜1500mm、システム真空度は48〜49kPaで設置されている。導入農家5戸での搾乳能率は1ユニットあたり3.4〜4.1頭/hである。導入農家では、乳頭表面のうっ血はみられないという聞き取り結果である(表3)。
- 以上からこの同時拍動方式搾乳装置は、搾乳サイクル休止期の乳頭先端真空度が交互拍動方式より低くなるが、乳頭先端に目立った変化は現れず、搾乳能率も一般的な数値であったことから、既存の搾乳装置と同じように利用できると判断される。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は、同時拍動方式搾乳システムの導入検討に際し、参考として利用する。
平成17年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「同時拍動方式搾乳装置の特性」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
搾乳システムの特性調査
予算区分:受託
研究期間:2005年度
研究担当者:吉田邦彦、高橋雅信、高橋圭二
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