牛培養細胞への遺伝子導入技術


[要約] [キーワード] [担当]道立畜試・畜産工学部・遺伝子工学科・受精卵移植科
[連絡先]電話0156-64-5321
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]科学・参考



[背景・ねらい] [成果の内容・特徴]
  1. 牛培養細胞(胎子線維芽細胞)への遺伝子導入において導入試薬および導入遺伝子の形状を比較検討した結果、活性型デンドリマー形成試薬を用い環状プラスミドDNAを導入する方法でのEGFPの発現率(導入後24時間)は30-50%であり、非リポソーム系脂質試薬および直鎖化DNAを用いた場合と比較して高い値となる(表1)。また、ネオマイシン(G418)耐性配列を組み込んだ遺伝子を導入した場合、G418添加濃度が800μg/mlの場合において遺伝子導入細胞の選択培養が可能である。これらの方法を用いて牛培養細胞へのDNA/RNAキメラプラストの導入が可能である。
  2. 遺伝子修復モデル細胞およびバンド3欠損症ホモ接合型細胞を用いて遺伝子修復を試みたが、DNA/RNAキメラプラストの濃度、導入時間、細胞周期の条件の違いにかかわらず遺伝子修復現象(EGFP発現および塩基置換部位の正常化)はみとめられない。
  3. EGFP発現ベクターを導入した牛胎子線維芽細胞をドナー細胞に用いて核移植を行った結果、16-細胞期以上に発生した胚の全てにおいてEGFP発現が観察される(表2)。また、EGFPの発現開始時期を発現の強度(+〜+++)別に観察した結果、8-細胞期からEGFPの発現が始まる胚の割合が最も多く(図1)、この時期にEGFP発現がみとめられない胚の胚盤胞期への発生率は有意に低い結果となる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本試験により示された牛培養細胞への遺伝子導入法および遺伝子導入細胞を用いた核移植は遺伝子修復技術に利用可能である。
  2. 本試験においては遺伝子修復現象を確認することができなかったため、今後さらに遺伝子修復に関する幅広い知見の集積が必要である。
  3. 牛培養細胞への遺伝子導入においては、導入遺伝子の種類や他の細胞種を用いた遺伝子導入効率、遺伝子発現効率の検討を行う必要がある。

    平成17年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
    「牛培養細胞を用いた遺伝子修復のための基礎技術」(研究参考)
[具体的データ] [その他]
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