高感度で簡便な異常プリオン蛋白質の検出法


[要約] [キーワード] [担当]道立畜試・畜産工学部・遺伝子工学科、感染予防科、代謝生理科
    動物衛生研・プリオン病研究センター・病原・感染研究チーム
[連絡先]道立畜試 電話0516-64-5321
[区分]
[分類]科学 参考



[背景・ねらい] [成果の内容・特徴]
  1. 磁性粒子を用いた生物発光法(磁性粒子BL法:図1)は、既存の抗マウスPrP mAbを用いたELISA法およびプレートを用いたBL法より、組換えウシプリオン蛋白質(ウシre-PrP)および正常牛の脳乳剤に対する反応性が高く、プリオン蛋白質検出法として優れていた。
  2. 大腸菌での蛋白質発現によりウシre-PrPを作製した。このウシre-PrPを免疫したマウスの脾臓細胞とNS1細胞を融合させ、12株の抗体産生細胞株を樹立した。これらの細胞からモノクローナル抗体(1b〜12b)を作製した。ウシre-PrPおよび正常脳乳剤を抗原とするラジオイムノアッセイの結果、高い反応性を示す捕捉用抗体と検出用抗体の4つの組合せを見出した。
  3. 抗体を磁性粒子BL法へ応用したところ、捕捉用抗体6bと検出用抗体2bの組合せがウシre-PrPおよび脳乳剤への反応性が最も高かったため、ウシPrP測定用抗体とした。磁性粒子BL法は、マウスre-PrPに比べ、ウシre-PrPへの反応性が高かった。正常およびBSE感染脳乳剤をプロティナーゼK(PK)で消化処理したところ、BSE感染脳乳剤では有意に高い蛍光強度を示し、PK抵抗性プリオン蛋白質の検出が可能であった(図2)。
  4. BSE感染牛の大脳を用いて市販のBSE検査用ELISAキットと比較したところ、磁性粒子BL法は、ELISAキットよりも高感度であった(図3)。また検査に必要な合計所要時間は約2時間45分であり、ELISA キットの約2/3であった(表1)。
  5. 以上のように、磁性粒子BL法によるPrPSc検出法は、BSE感染脳組織から微量のPrPScを検出することができるとともに、市販のBSE検査用ELISAキットより、検査時間が短いことから、将来BSEの診断法への応用が期待できる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本法は異常プリオン蛋白質の高感度で迅速な測定法であり、BSEにおける異常プリオン蛋白質の体内分布の解析等に用いることができる。
  2. BSE感染脳乳剤や感染性材料の取り扱いには、バイオセーフティ基準3に準拠した実験室を必要とする。
[具体的データ] [その他]
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