飼料用とうもろこしの破砕処理効果と簡易耕栽培
[要約]
とうもろこしサイレージ(CS)の切断長は熟期に関わらず19mmとし、糊熟期では破砕は必要なく、黄熟期、完熟期のローラ間隔は各々5、3mmが適切である。破砕処理CS多給でTDN自給率82%、一乳期8500kgの乳量が得られる。簡易耕栽培は慣行法より収量が同等かやや低いが、播種時間を4割短縮できる。
[キーワード]
乳用牛、とうもろこしサイレージ、破砕処理、簡易耕栽培
[担当]道立畜試・畜産工学部・代謝生理科、環境草地部・草地飼料科
[連絡先]電話0156-64-5321
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
飼料自給率を高めつつ効率的な乳生産を行うためには、高エネルギーで多収なとうもろこしサイレージ(CS)の利用が有効であるが、繊維不足に伴う代謝病の発生を懸念し、給与量は制限されている。破砕処理技術の利用により、子実の消化性の向上とともに切断長の延長による繊維効果により、CS給与量の増加が期待できる。また、飼料用とうもろこしの栽培にはコントラクターの利用が不可欠となっており、省力的な播種・栽培技術が求められている。
そこで、とうもろこしの収穫時の熟期に適した破砕処理条件を提示し、破砕処理CS多給時の乳生産や健康に及ぼす影響を明らかにするとともに、簡易耕を用いた飼料用とうもろこしの省力栽培技術を検討する。
[成果の内容・特徴]
- 糊熟期では破砕処理をしなくてもデンプン消化率が高く、切断長19mm・未破砕のときルーメン内可消化デンプン量および分娩後の体重増加量が多い(表1)。黄熟期はローラ間隔5mm、完熟期はローラ間隔3mmで破砕処理すると、未破砕に比べルーメン内デンプン消化率および可消化量が高く、乳量および体重増加量が多い。いずれの熟期でも切断長を9mmから19mmにすると反芻時間が増加し、物理性が向上する。しかし、切断長を22mmまたはローラ間隔を1mmにするとNDF消化率が低下し、養分利用性のさらなる向上はみられない。
- 以上より、とうもろこしの熟期別に推奨する破砕処理条件を表2に提示する。
- 黄熟期の破砕処理CS(切断長19mm・ローラ間隔5mm)を1乳期飽食給与すると、TDN自給率82%で8500kgの乳生産が得られる(表3)。破砕処理CS給与群で分娩後の体重回復が早く、健康への影響もないが、泌乳初期にエネルギー不足がみられ、併給飼料の検討が必要である。
- 十勝管内の酪農家で破砕処理CS(切断長17mm・ローラ間隔3.5mm)を多給(現物給与量36kg)しても、乳量は多給前後とも30kg/日で、第四胃変位の発生率にも差はない。
- とうもろこしの収量は慣行法に比べ、とうもろこし跡では簡易耕栽培が同程度で、不耕起が10%程度減収する(表4)。草地跡では簡易耕が10%程度の減収に対し、不耕起は収量が大きく低下する場合があるため、不耕起は避けるべきである。
- とうもろこしの耕起から播種に要する作業時間は、慣行法(5.8時間/ha)に比べて短縮され、簡易耕で3.4時間/ha、不耕起で2.1時間/haである。
[成果の活用面・留意点]
- 破砕処理とうもろこしサイレージは熟期により養分利用性が異なることから、飼料特性を考慮した飼料設計を行う必要がある。
平成17年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「飼料用とうもろこしの破砕処理効果と簡易耕栽培」(普及推進)
[具体的データ]
[その他]
飼料自給率向上のための飼料用とうもろこし高度利用技術の確立
予算区分:重点領域
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:谷川珠子、大坂郁夫、川本哲、原悟志、中村克己、澤田嘉昭、扇勉、大原益博、小林泰男(北海道大学)、古川研治(十勝農協連)
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