ペレニアルライグラス「ポコロ」の導入による草地植生および家畜利用性の改善
[要約]
ペレニアルライグラス「ポコロ」は、作溝型播種機を用いた簡易更新でも放牧地の植生改善に十分な効果が期待出来る品種であり、導入により放牧草の栄養価や採食性を改善し、サイレージとして利用すると自給飼料依存度を高めた飼養管理が可能である。
[キーワード]
牧草、ペレニアルライグラス、家畜、乳用牛、放牧、サイレージ
[担当]天北農試・技術体系化チーム・技術普及部・研究部・草地環境科、牧草飼料科、管理科
[連絡先]電話01634-2-2111
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
飼料自給率向上には、牧草の収量・利用性の向上と高品質化が重要である。ペレニアルライグラス(以後PRと略す)は、採食性が良好で糖含量が高いなど放牧利用やサイレージ調製に適しており、天北農試では平成11年に新品種「ポコロ」を育成した。
PR「ポコロ」は、地域適応性が高く放牧を主として採草にも利用できることから、種子流通に合わせた栽培・利用技術の普及・定着の促進を図るため、放牧地への簡易・低コストな導入技術および採草利用技術を現地で実証・展示し、導入による草地植生および家畜利用性の改善を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- PR「ポコロ」は平成17年5月に種子の流通が開始され、全道で自力更新を主体に約3tが販売され、更新面積は120ha以上と推定され普及拡大が開始されている(図1)。実証・展示ほ場として、試作用種子を用いて放牧地8.8ha(4戸)、採草地6.8ha(2戸)を設置した。
- 作溝型播種機を用いた簡易更新による放牧地への「ポコロ」播種は、早春播種で短草 (20cm)・多回利用(年10回以上)を続ければ2年目秋に主体草種となり、同様に播種した「既存品種」より植生改善効果が高い(図2)。 兼用地への「既存品種」播種は、2年目秋では冠部被度が29%と放牧地の35%に比べて少ない。
- 放牧地に「ポコロ」を簡易更新で播種したところ、放牧草の栄養価(TDN)が3〜6%高まり、乳牛による放牧草の採食量に改善効果が認められる(図3)。
- 「ポコロ」サイレージを混合飼料(TMR)に利用すると粗飼料比率の高い飼料設計が可能となり、ロールベールサイレージとした場合は、既存のイネ科混播牧草サイレージより採食量が少ないにもかかわらず産乳量が多くなる(図4、表1)。
[成果の活用面・留意点]
- PR「ポコロ」を用いた放牧地と「既存品種」を用いた兼用地への簡易更新は、植生改善効果が現れるには2〜3年を要する。また、播種後の短草・多回利用により播種個体の定着を促進させる必要がある。
- PR「ポコロ」の栽培・利用は、土壌凍結の無い多雪地帯に限る。
- 完全更新では、1年生広葉雑草に生育を抑制されるため、除草剤による前植生処理や播種前雑草処理が必要で、経年草地のギシギシ類対策を含めて雑草防除ガイドに準拠して実施する。
平成17年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「ペレニアルライグラス「ポコロ」の導入による草地植生および家畜利用性の改善」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
ペレニアルライグラス「ポコロ」を活用する自給飼料依存型酪農の現地実証
予算区分:国補(革新的農業技術導入促進事業)、交付金
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:石田 亨、竹田芳彦、内山誠一、河野迪夫、三浦康雄、椋本正寿、山川政明、大村邦男、三浦 周、宮森康雄、古館明洋、奥村正敏、岡本英樹、井内浩幸、堤 光昭、飯田憲司、藤井弘毅、峰崎康裕
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