牧草のヒートダメージが軽種馬の消化性に及ぼす影響
[要約]
60℃で加熱処理した乾草の軽種馬による消化率は非加熱のものと比較してNDFの消化性向上が認められ、80℃で加熱処理した乾草の消化率は60℃のものと比較して繊維画分および非繊維性炭水化物の消化率およびTDNが低くなる。
[キーワード]
ヒートダメージ、ウマ、牧草、粗飼料、チモシー、消化率
[担当]道畜産試・環境草地部・草地飼料科、家畜生産部・肉牛飼養科
[連絡先]電話0156-64-5321
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
軽種馬生産農家が乾草を調製する際には「仮巻き」といわれる方法を採っているところが多い。すなわち圃場で2〜3日の予乾後、ロールにして一時保管し、後日ほぐして乾草を仕上げる方法である。このロールでの一時保管中には水分が充分に低下していないのでヒートダメージが起きている可能性がある。しかし軽種馬の場合にはヒートダメージが消化性に及ぼす影響は調べられていない。そこで軽種馬4頭一群による全糞採取法、反転法試験配置の消化試験により、非加熱と60℃加熱、60℃加熱と80℃加熱乾草の消化率を比較する。また「仮巻き」の方法について現地で聞き取り調査を行い、ヒートダメージの有無について考察する。
[成果の内容・特徴]
- 非加熱区と60℃区の比較において乾物摂取量、血液成分に差は認められない。成分含量は60℃区では中性デタージェント不溶タンパク質(NDICP)含量が高くなる。成分消化率は60℃区のNDFが有意に高くなる(表1)。
- 60℃区と80℃区の比較において乾物摂取量および血液成分に差は認められない。成分含量は80℃区でCP、繊維画分およびCP中のNDICP、結合性タンパク質(CPb)が高くなり、粗脂肪、非繊維性炭水化物およびCP中溶解性タンパク質(CPs)が低くなる。成分消化率は80℃区の繊維画分、非繊維性炭水化物および乾物で低くなり、TDNについても80℃区で低い(表1)。
- 軽種馬農家が行っている「仮巻き」の手順は、圃場での2〜3日乾燥後、@ロールにして1〜3日一時保管し、Aほぐして水分を蒸発させ、品温をやや上昇させたあとに、B再度ロールにして乾草を仕上げるというものである(表2)。既往の報告*および聞き取り結果から発熱は60℃程度までと推測され、期間も短いことから消化率の低下を伴うほどのヒートダメージは起きていないと推察される。
*根釧農試(1986)粗飼料のくん炭化防止に関する試験.昭和60年度北海道農業試験会議資料
*野中和久・名久井忠・大下友子(1997)水分含量・ラッピングの違いが短期貯蔵した低水分ロールベールサイレージの品質に及ぼす影響.日草誌43(別)280-281
[成果の活用面・留意点]
- 軽種馬生産農家における乾草調製時に活用が期待される。
- 過度の発熱および乾物のロスを避けるため、水分30%以上での仮巻きは避ける。
- 60℃程度であっても長期間の加熱は消化率を低下させる恐れがある。
平成17年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「牧草のヒートダメージが軽種馬の消化性に及ぼす影響」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
サイレージのヒートダメージが軽種馬の消化性に及ぼす影響解明
予算区分:受託
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:出口健三郎、中村克己、阿部英則、杉本昌仁、佐藤幸信、斉藤利朗
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