ハウス栽培きゅうりの生物農薬利用マニュアル
[要約]
ハウス栽培きゅうりの主要病害虫(ハダニ類、ワタアブラムシ、オンシツコナジラミ、うどんこ病)に対し、生物農薬の導入時期や化学農薬の要否の目安などの防除体系をまとめた生物農薬利用マニュアルを作成した。
[キーワード]
キュウリ、生物農薬、発生モニタリング、バンカープラント、減化学農薬
[担当]道立中央農試・クリーン農業部・総合防除科
[連絡先]電話01238-9-2290
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
「ハウス栽培きゅうりの主要害虫に対する天敵農薬の利用法」(平成15年度研究成果情報)で示した技術の実用性および防除効果を農家圃場において実証し、きゅうりの主要病害虫に対する防除体系をまとめて生物農薬利用マニュアルを確立する。
[成果の内容・特徴]
- 菜豆を用いたモニタリングプラント法を目安としてカブリダニ剤(チリカブリダニ、ミヤコカブリダニ)ヲ導入する方法は、ハダニ類防除に有効である。ハダニ類が増殖した場合、食痕の見られる株が数株で1〜2カ所程度であれば殺ダニ剤をスポット散布し、それ以上であれば天敵に影響の少ない殺ダニ剤を全面散布する。
- バンカープラントを設置してコレマンアブラバチ剤を導入する方法は、ワタアブラムシ防除に有効である。バンカープラントで6月中旬までにアブラムシ類を発生させ、ワタアブラムシ初発の可能性がある6月下旬以前にアブラバチ剤の初回放飼を行う。
- ワタアブラムシのコロニーやすす症状を発見した際は、寄生株率を調査して50%以下であればすす症状による被害が見られる場所にのみ殺虫剤をスポット散布し、50%を超えていれば天敵に影響の少ない殺虫剤を全面散布する。
- 黄色粘着トラップを用いたモニタリング法を目安としてサバクツヤコバチ剤を導入する方法は、オンシツコナジラミ防除に有効である。なお、8月まで誘殺が確認されない場合、導入は不要である。
- うどんこ病に対し、発病初期からのバチルス・ズブチリス水和剤(QTS-713株)の継続散布は効果が高い。本剤を効率的に使用するには、発病初期に化学農薬で防除を行ったのちに本剤の散布を開始し、その後うどんこ病の進展が見られ十分な効果が期待できなくなった場合には化学農薬を用いた防除に移行する。
- 以上の内容をとりまとめた、きゅうりの生物農薬利用マニュアルを図1〜4に示す。
- 生物農薬を病害虫防除に利用することで、慣行に比較して化学農薬を50%以上削減、YES!cleanの基準に比較しても40%以上削減できることが実証され、大幅な化学農薬削減が可能である。農薬散布に要する労働時間は慣行に比較して大幅に削減されるが、資材費はほぼ同等〜1.7倍程度となる。
[成果の活用面・留意点]
- 本マニュアルはハウス栽培きゅうり(夏秋どり)の病害虫に対して活用する。
- 記載以外の病害虫防除については適宜行う。
- 生物農薬の基本的な取り扱い方についてはメーカー等の情報を参考とする。
- 化学農薬の使用については、日本バイオロジカルコントロール評議会作成の「天敵等への化学農薬の影響の目安」表を参考とする。
[具体的データ]
[その他]
きゅうりIPM技術マニュアルの確立および現地実証
予算区分:道費
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:田中文夫、橋本庸三、齊藤美樹
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