草地に表面施用された重窒素標識スラリーおよび堆肥の窒素動態


[要約] [キーワード] [担当]北海道立根釧農業試験場・研究部・草地環境科
[連絡先]電話01537-2-2004
[区分]北海道農業・生産環境、共通基盤・土壌肥料、畜産草地・生産管理
[分類]技術・参考



[背景・ねらい] [成果の内容・特徴]
  1. 重窒素標識スラリー(全窒素0.23%、重窒素3.16atom%)を現物40t/ha表面施用すると、牧草体の重窒素割合は施用当年に著しく高まり、以後急激に低下するが、3年目まで自然存在比よりも高い水準を維持する。一方、堆肥(全窒素0.38%、重窒素2.55atom%)では、スラリー施用時のような急激な上昇は認められず、自然存在比よりも高い重窒素割合が3年間持続する (図1)。したがって、いずれの資材施用時にも、4年目以降への肥効の持続が期待される。
  2. 表面施用3年目2番草収穫後の重窒素割合は、牧草体の刈り株・根と0-2cm土壌、すなわち草地表層で高まり、その程度は堆肥施用の場合に顕著である(図2)。
  3. 同位体トレーサー法によって求めた地上部窒素吸収量に占めるふん尿由来窒素の割合は、スラリーの場合、施用当年に9-17%と高まり、以後急激に低下する。これに対し、堆肥では3年間を通じて2-6%と低いが、経年的な低下はみられない。このように、堆肥施用時の牧草は、ふん尿由来窒素の利用がスラリーよりも少ないことから、土壌由来の窒素をより多く利用する(表1)。
  4. 差引法の結果と合わせた全体の収支を見ると、化学肥料と併用されたスラリー由来の窒素は、3年間で23%が収穫物によって持ち出され、53%が土壌に残存する。一方、堆肥由来の窒素は、収穫物によって持ち出される割合が10%とスラリーの場合よりも少なく、土壌に残存する割合が68%と高くなる。堆肥施用時の牧草におけるふん尿由来窒素の持ち出し量はスラリーよりも少ないが、土壌・化学肥料由来窒素の持ち出し量が多いので、スラリーと堆肥における3年間合計の持ち出し量の差は小さい。行方不明には、誤差の他に揮散、脱窒、溶脱などによる損失が含まれると考えられ、その割合はスラリーで20%、堆肥で15%と差が小さい(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果は、ふん尿有効利用技術の開発とその時の環境影響評価を目的とする研究の参考になるとともに、生産現場におけるふん尿主体施肥普及時の基礎知識として有用である。

    平成17年度北海道農業試験会議(成績会議における課題名および区分)
    「草地における重窒素標識乳牛堆肥およびスラリーに由来する窒素の動態」(研究参考)
[具体的データ] [その他]
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