道央の温度条件とホウレンソウの寒締め作型
[要約]
道央においては、一般的な開閉管理の無加温ハウスでホウレンソウの寒締め栽培が可能である。さらにハウスの換気側窓を終日開放して寒気暴露すると、一般的な開閉管理に比べて10日程度出荷を前進できる。厳寒期に寒気暴露すると糖度12度以上に高糖度化できる。
[キーワード]
[担当]北海道農研・生産環境部・気象資源評価研究室
[連絡先]電話011-857-9234
[区分]北海道農業・生産環境、共通基盤・農業気象
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
冬期の低温を活用して糖度・品質向上をねらう「寒締めホウレンソウ」は、これまで東北地方を主産地としており、日平均気温が-10℃を下回るほどの厳寒となる北海道での栽培は適応外とされていた。そこで北海道中央部(道央)における寒締めホウレンソウの栽培適応性と作型、さらに厳寒条件を活用する北海道ならではの高糖度化栽培法について検討した。
[成果の内容・特徴]
- ホウレンソウの糖度は、収穫前5日間の日平均地温(深さ10cm)が1℃下がるにつれて概ね2度(BRIX糖度、以下同じ)の割合で上昇する(図1)。暫定的に糖度8度以上を寒締めホウレンソウの品質基準とすると、収穫前5日間の平均地温5℃以下が寒締めの目安となる。
- 一般的な開閉管理(日中のハウス内気温20-25℃以下を目標に換気する)を行う無加温ハウス内の日平均地温が5℃になるのは、屋外の日平均気温が概ね-2℃になる時期である。すなわち、屋外の日平均気温が-2℃以下であれば、無加温ハウスで寒締めホウレンソウが栽培できる。
- ハウスの換気側窓を終日開放して寒気暴露すると、概ね屋外の日平均気温0℃で日平均地温が5℃となるので、一般的な開閉管理を続けたハウスに比べて、札幌の平年では出荷を10日程度前進できる。
- 寒気暴露により収穫前5日間の平均地温を2℃以下まで下げると、ホウレンソウは糖度が12度以上の、従来にない高糖度寒締めホウレンソウになる(図1)。なお、寒気暴露によりハウス内日平均気温が-10℃(日最低気温-17℃)まで低下しても、予め寒締めされたホウレンソウは凍害を受けない。
- 寒締めが可能な低温下ではホウレンソウの生育はほとんど停止するため、それ以前に出荷サイズまで生育させる必要がある。播種日と12月20日時点の地上部生体重との関係(図2)から、札幌の平年において、寒締めが可能となる12月20日までに一個体重30-35gとするための播種適期は9月下旬である。
- 道央では、一般的な開閉管理で寒締めホウレンソウを栽培する作型と、極低温期に側窓を開放して高糖度の寒締めホウレンソウを作る作型、および、外気温が0℃になった時点でハウスの側窓を開放して出荷を前進する作型の3種類の作型が成り立つ(図3)。
[成果の活用面・留意点]
- ハウス内日平均気温-10℃以下でのデータはないことから、本成果は岩見沢以南の道央地域を対象とする。
- 供試品種は「まほろば(低温伸長性が高い良食味品種)」である。
- 側窓を開放してから地温が低下するまでに日数を要するので、側窓開放から十分に糖度が上昇するまで2週間程度必要である。
- 本成果は作型等を平年の温度から求めているので、気象の年次変動を考慮して利用する。
平成17年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「道央の温度条件とほうれんそうの寒締め作型」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
数種野菜の寒締め適応性の検討と生育調節シナリオの策定
予算区分:高度化事業
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:濱嵜孝弘、鮫島良次、廣田知良
発表論文等:濱嵜ら(2005)農業技術60(12):544-549
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