チゼルプラウシーダによる春まき小麦初冬まき栽培の越冬性改善
[要約]
砕土ディスク付きチゼルプラウシーダは、砕土した土塊と小麦種子を混和し、低温による発芽力低下を抑え、越冬出芽率が6ポイント向上する。
[キーワード]
春まき小麦、初冬まき栽培、散播、越冬個体率、チゼルプラウシーダ
[担当]北海道農研・北海道水田輪作研究チーム
[代表連絡先]電話011-857-9260、電子メール seika-narch@naro.affrc.go.jp
[区分]北海道農業・水田・園芸作
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
春まき小麦の初冬まき散播栽培では条播に比べて悪条件での播種が可能であるが、越冬後の個体数を安定的に確保することが難しい。
そこで、表面散播方式で種子を覆土する機構を備えた播種機を開発し、越冬性を改善する方策を検討する。
[成果の内容・特徴]
- 砕土ディスク付チゼルプラウシーダは1工程で耕起・播種・砕土を行う。チゼル爪で耕起された土塊はチゼル爪の後方に配置されたディスク(花型ディスク、外径450mm、取り付け間隔18cm、12枚)で小さな土塊に砕土され、砕土ディスクの上方に位置する種子導管より排出された種子が、砕かれた小土塊と混和され、覆土される(図1)。
- −8℃以下の強い低温を受けると、土壌表面の種子の発芽率が大きく低下するが、覆土された種子の発芽率低下は抑制される(図表省略)。このため覆土された種子は積雪前の低温の影響を緩和できる。
- 従来のかごローラ付チゼルプラウシーダによる表面散播では、越冬出芽種子は地表から深さ2p程度までの浅い層に多く分布するのに対して、砕土ディスク付チゼルプラウシーダでは1.5〜3pの層に多く分布する(図2)。砕土ディスク付チゼルプラウシーダは従来の表面散播式に比べて播種直後の種子の地表面露出割合が低く、越冬出芽率が約6ポイント向上する(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 砕土ディスク付チゼルプラウシーダは従来のチゼルプラウシーダの砕土用カゴローラのユニットを交換するだけで容易に改造できる。また、走行速度や耕深等の条件も従来機と同様に作業できる。
- 越冬後個体数が150個体/m2より少なく、かつ、止葉期までに生育の回復が認められない場合は、有効穂数が400本/m2、子実収量430kg/10a以下となることが多く、十分な密度が確保された場合に比べて、子実収量は窒素施肥量が3kg/10a少ない段階で頭打ちとなり、窒素吸収量も収量に応じて減少する。吸収量と釣り合いがとれる窒素施肥量は3kg/10a少ないため、止葉期以降の後期追肥量を3kg/10a以内で減らす等の対策を講じることが可能である。
- 「春よ恋」を用いた道央多雪地帯における成績である。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「チゼルプラウシーダによる春まき小麦初冬まき栽培の越冬性改善」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:北海道地域における高生産性水田輪作システムの確立
課題ID:211-k
予算区分:基盤
研究期間:2006〜2007年度
研究担当者:大下泰生、辻博之、君和田健二
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