「WILIS」由来のダイズわい化病高度抵抗性選抜法
[要約]
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開発したウイルス接種検定法とDNAマーカーにより「WILIS」由来のダイズわい化病高度抵抗性選抜が可能である。「WILIS」と優良品種「トヨコマチ」との連続戻し交配により実用形質を兼ね備えた高度抵抗性の育種素材を作出できる。
[キーワード]
- ダイズわい化病、高度抵抗性、育種素材、DNAマーカー
[担当]道立中央農試・遺伝資源部・資源利用科、基盤研究部・遺伝子工学科
[代表連絡先]電話0125-23-6697
[区分]北海道農業・畑作
[分類]研究・参考
[背景・ねらい]
- 北海道の大豆栽培上の重要病害であり、薬剤防除が困難かつ十分な抵抗性を持つ栽培品種がないダイズわい化病について、インドネシア原産の遺伝資源「WILIS」の持つ高度抵抗性を戻し交配により栽培品種に導入し、抵抗性と実用形質を備えた育種素材を作出する。
[成果の内容・特徴]
- ウイルス接種検定において、「WILIS」は「トヨコマチ」より病徴の発現が明らかに遅く、そのF2集団では発病の遅延程度を示す「接種後発病までの日数」がWILIS型・トヨコマチ型・中間型に不連続分布を示すため、抵抗性検定の指標とできる(図1)。
- 「WILIS」由来の高度抵抗性QTLに連鎖したDNAマーカーSat_271を連鎖群A1上に同定した。Sat_271は抵抗性選抜に利用でき、共優性マーカーのため、抵抗性型ホモとヘテロの個体判別が可能である(図2)。
- 連続戻し交配と上記の抵抗性選抜法により作出したBC4F3およびBC3F4世代の選抜系統は、マーカーによりわい化病高度抵抗性の固定が確認されており、一次特性がほぼ「トヨコマチ」並である。また、BC3F4世代については検定圃場での発病率が5%以下と低く高度抵抗性を持つ(表1)。
- BC5F2世代選抜個体は、マーカーによりわい化病高度抵抗性の固定が確認され、一次特性が概ね「トヨコマチ」並である。戻し交配を重ねたことにより、BC3F4世代と比較して百粒重がより「トヨコマチ」並に近付いている(表2)。
[成果の活用面・留意点]
- 抵抗性選抜マーカーSat_271の配列情報は以下のサイトから入手可能である。
http://soybase.org/resources/ssr.php
- 作出した育種素材は「トヨコマチ」に近い形質を有し、高度抵抗性の交配母本として品種育成に利用できる。
- わい化病抵抗性以外の特性については固定が十分に進んでいない可能性がある。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「「WILIS」由来のダイズわい化病高度抵抗性選抜法と育種素材の開発」(研究参考)
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:高度抵抗性遺伝資源の利用による難防除ウイルス病(ダイズわい化病・コムギ縞委縮病)抵抗性育種素材の開発 1)ダイズわい化病)
予算区分:道費
研究期間:2004〜2007年度
研究担当者:山下陽子、佐々木純、田澤暁子、内堀 篤(北大院農)、竹内 徹、紙谷元一、南 忠
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