乳牛における周産期病低減のためのモニタリング手法と現地実証
[要約]
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乾乳後期の腹囲形状はその後の周産期病発症リスクを予測するうえで有用なモニタリング項目であり、乾乳期の適切な群分け、乾乳後期から産褥期にかけての適切な飼料給与と十分な休息スペースの確保により、周産期病が低減できる。
[キーワード]
- 乳牛、周産期病、乾乳後期、腹囲形状、群分け、飼料分析、飼養密度
[担当]道立畜試・技術体系化チーム(技術普及部、基盤研究部・病態生理科)
[代表連絡先]電話0156-64-5321
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
- 周産期病の発生には、分娩前後の不適切な飼養管理(群分け、栄養管理など)に起因するルーメン機能の低下や飼料摂取量の不足などから体脂肪動員や代謝障害を引き起こすという一連の流れが根底に見受けられる。
そこで、周産期病発症リスクを早期に予測する牛群モニタリング手法を検討するとともに、農場毎に改善が必要な飼養管理について既存の予防対策を的確に導入することによる周産期病低減効果を実証する。
[成果の内容・特徴]
- 乳牛のルーメン膨満度を視覚的に判断する指標として腹囲形状(図1)を考案し、乾乳後期の腹囲形状とその後の周産期病発生との関係を5農場で調べたところ、各形状の間で周産期病発生率に差が見られ、“ボックス形”の腹囲形状を呈する牛では周産期病の発生率が高い(表1)。腹囲形状は周産期病の発生リスクをモニタリングする指標として有用である。
- 乾乳後期にTMR方式で飼料を給与している5農場において、乾乳後期用飼料の成分と物理性を調べたところ、飼料設計値と分析値の差が大きい農場(B、F、I)、あるいは飼料片サイズの変動が大きい農場(B、I)が見られる。これらの農場では周産期病が多発していたことから、設計したとおり適正に飼料が調製されているかどうかを評価することは、周産期病を低減するための重要なモニタリング項目の一つである(表2)。
- 周産期病の発生率が高い3農場(フリーストール飼養・TMR給与)において、乾乳期(前期・後期)および産褥期の群分け、休息スペース確保、ならびに飼料設計の見直し(分析値に基づきCP・TDN等の適正化、ミネラル添加)を中心に改善を実施することで、周産期病の発生率低減が実証されている(表3)。これら改善項目は周産期病予防のための重要なチェック項目である。
[成果の活用面・留意点]
- 腹囲形状は、周産期病の発生を予測する簡易な指標として生産現場で活用できる。
- 周産期病低減実証に用いた改善ポイントは現地での周産期病予防対策の参考になる。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「乳牛における周産期病低減のためのモニタリングと現地実証」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:乳牛における周産期病低減の現地実証
予算区分:農政部事業(革新的農業技術導入促進事業)
研究期間:2006〜2007年度
研究担当者:草刈直仁、菊地 実、松井義貴、山本裕介
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