乳用牛(成牛)のサルモネラ症の発症要因と発生防止対策


[要約]

[キーワード]

[担当]道立畜試・基盤研究部・感染予防科、病態生理科、道立根釧農試・研究部・乳牛繁殖科
[代表連絡先]電話0156-64-5321
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・参考


[背景・ねらい]

[成果の内容・特徴]

  1. 道内A町の酪農場の牛舎環境材料(3カ年延べ138戸、414試料)および成牛の糞便材料(6戸、延べ359頭)からサルモネラ(Sal)は分離されない。また、預託哺育農場導入時の子牛の糞便からの分離率は0.44%(1,600頭中7頭)であり、ほとんどの子牛が陰性である。したがって、調査対象とした酪農場においてSalは常在せず、Sal症発生防止のためには外部からSalを持ち込まない管理が重要である。
  2. ELISA法を用いた抗体検査では、Sal症の発生歴の有無に関わらず抗体陽性と判定される牛が認められ、非発生農場であっても感染機会が存在することを示唆する。
  3. 道内AおよびB町のSal症発生農場は、非発生農場に比べて飼養頭数が有意に多く(138頭±131頭 vs 63頭±33頭、P<0.05)、飲水器の洗浄頻度が少ない傾向にある。初発牛やSal陽性牛は泌乳前期牛(0〜100日)に多く(表1)、発生農場で認められる泌乳初期牛(31〜60日)の乳蛋白質率の低下(表1)、すなわちルーメン機能の減退から菌体蛋白合成能が低下した状態にあることが発症要因に関与していると考えられる。
  4. 飼料給与条件が異なる牛のルーメン液を用い、S. Typhimurium(ST)6株を39℃で6時間振盪培養したところ、ルーメン液のpHおよび総VFA濃度と生菌数の増減との間に高い相関が認められる(図1)。生菌数は16時間の絶食後に得た高pH、低総VFA濃度のルーメン液中で最も増加し、ルーメン内環境を同様の状態にする飼養条件は、Sal症の発生要因になると考えられる。さらに、平成5年および17年分離株のST7およびST14は、昭和61年分離株のST3よりもルーメン液中で増殖しやすく、この増殖性の違いが近年のSal症多発の一要因となっている可能性がある(図2)。
  5. Sal症の発生防止のためには、Salの農場内持ち込みを防ぐ管理や牛への感染機会を減らす管理とともに、ルーメン機能を正常に維持する飼養管理、すなわち絶食または飼料摂取に制限が加わるような管理の防止やルーメンアシドーシス(その後のルーメン機能の停止)を防ぐ管理が特に重要である(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 酪農場におけるサルモネラ症の発生防止対策として活用する。

平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「酪農場における牛サルモネラ症の実態解明と発生防止対策」(指導参考)

[具体的データ]

[その他]

 



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