LAMP法を用いた生乳中のエンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌検出技術
[要約]
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生乳中エンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌検出のため開発したLAMP法は120分で特異性の高い結果が得られ、生乳中の菌数1,000 cfu/mlで100%検出が可能である。
[キーワード]
- 黄色ブドウ球菌、エンテロトキシンA、LAMP法、生乳、細菌検査、食中毒
[担当]道立畜試・基盤研究部・遺伝子工学科
[代表連絡先]電話0156-64-5321
[区分]北海道農業・畜産
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
- 黄色ブドウ球菌は代表的な毒素型食中毒菌であり、ほとんどの食中毒事例においてエンテロトキシンA(SEA)が原因毒素として検出されている。本食中毒の原因食品の一つに乳製品が挙げられ、生乳中SEA産生黄色ブドウ球菌の迅速かつ高感度な検出技術の確立が安全性確保のため望まれる。そこで、LAMP法を用いたSEA産生黄色ブドウ球菌の検出技術を開発する。
[成果の内容・特徴]
- 検出時間が短く特異性ならびに検出感度が高いSEA産生黄色ブドウ球菌検出用LAMP法を開発するためループプライマーを含むプライマー6本を作製し、有用性の検討を行う(図1、表1)。本プライマーを用いる場合のLAMPの最適反応温度は61℃である。
- 作製したプライマーは黄色ブドウ球菌ゲノムDNA 5pg/tube以上の検出が可能であり、SEA以外のエンテロトキシン遺伝子を保有する黄色ブドウ球菌および生乳に混入の可能性がある他の細菌を検出せず、SEA遺伝子に対して高い特異性を示す。
- 生乳からのSEA産生黄色ブドウ球菌のDNA抽出法は、溶菌酵素であるアクロモペプチダーゼとDNA抽出試薬InstaGene を組み合わせる方法を用いた場合に、LAMP法の検出感度が最も良好である(図2)。
- 開発したLAMP法は、生乳中の菌数が1,000 cfu/mlあれば100%検出可能である。また、検出時間が2時間であり他の検査手法より短時間で検査できる(表2)。
- ナチュラルチーズ2種を用いて本検査法の検出感度を検討したところ100 cfu/gおよび10,000 cfu/g以上の場合に検出可能であることから、一部のナチュラルチーズでも本検査法が有用であることが推察される。
[成果の活用面・留意点]
- LAMP法を用いたエンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌の検出技術は、乳製品加工現場および検査機関における検査法の一つとして利用できる。
- 本技術は作製したプライマーを含む試薬としてキット化されており、自主検査の一環として使用可能である。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「LAMP法による生乳のエンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌検出技術」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:LAMP法による生乳のエンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌検出技術
予算区分:外部資金(都市エリア)
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:甲田洋子、尾上貞雄、山本裕介
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