新規プライマーを用いたLAMP法による牛ヨーネ菌検出
[要約]
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LAMP法の改良により、リアルタイムPCR法と同程度の感度で糞便中ヨーネ菌DNAを検出することが可能となり、LAMP反応時間は90分間から40分間までに短縮される。
[キーワード]
- ウシ、LAMP、ヨーネ病、診断、糞便、遺伝子、検査
[担当]道立畜試・基盤研究部・遺伝子工学科、栄研化学(株)・生物化学研究所
[代表連絡先]電話0156-64-5321
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
- 北海道における牛ヨーネ病患畜は2006年に555頭、2007年には7月の時点で422頭と減少傾向がみられない。畜産試験場は2004年1月に国産の遺伝子増幅技術であるLAMP法を用いた牛糞便からのヨーネ菌遺伝子検出法を開発したが、検出感度が0.05pg/testと低く、また検出時間が90分間と長いため、改良が必要である。そこで、本試験では、新たにLAMP用プライマーを作製し、LAMP法の検出感度向上および反応時間短縮を目指す。
[成果の内容・特徴]
- 新たに設計したプライマーF17によるLAMP法は、40分間のLAMP反応によりヨーネ菌DNA0.005pg/testを検出し、リアルタイムPCR法と同程度の検出感度である(図1)。また、高濃度のヨーネ菌類似菌DNAは50分以降に増幅するが、想定している判定時間以降の増幅で識別可能であり、プライマーダイマーに起因する非特異増幅は120分間までは生じない。
- ヨーネ菌が含まれていない糞便試料(陰性糞便試料)10試料から調製したDNA試料においてLAMP法による増幅反応はみられない。
- 患畜糞便58試料のうち糞便培養法陽性の16試料すべてにおいてLAMP法によりヨーネ菌DNAを検出する(表1)。
- 培養スコアが大きくなるとLAMP法のTt値(LAMP反応において濁度0.1に達した時間)が小さくなる傾向がみられる(図2)。
- LAMP法の検出結果は、リアルタイムPCR法の検出結果と93.1%一致し(表2)、またLAMP法のTt値とリアルタイムPCR法のCt値(リアルタイムPCR法において一定の増幅産物に達するサイクル数)に相関(γ=.736)がある(図3)。
- ヨーネ病発生農家の牛群から採取した糞便試料において、糞便培養法陽性9試料のうちLAMP法により検出できたのは3試料である。糞便培養法において確認されたコロニー数が少ない試料において、LAMP法およびリアルタイムPCR法で検出されないものもあるが、LAMP法の検出結果はリアルタイムPCR法の検出結果と96.8%一致する。
[成果の活用面・留意点]
- ヨーネ菌用培地上に形成したコロニーのヨーネ菌同定に活用できる。
- 本検査法は、国の「牛のヨーネ病防疫対策要領」および北海道の「牛のヨーネ病防疫対策実施要領」において、牛ヨーネ病の検査法に規定されておらず、現段階では、診断に利用できない。
- LAMP試薬キットを2008年度発売予定。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「LAMP法による牛ヨーネ菌検出」(研究参考)
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:LAMP法による牛ヨーネ菌検出
予算区分:道費(重点領域特別研究)
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:繪野澤真樹、陰山聡一、澤井 健、平井綱雄、尾上貞雄、扇 勉、山本裕介、納富継宣、神田秀俊、峰川晴美、鈴木 渉
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