養分循環に基づく北海道の乳牛放牧草地における標準施肥量
[要約]
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放牧により草地から減少する養分を施肥することを基本とすると、北海道の草種、地域、土壌の違いによらず、放牧草地の年間窒素施肥量をイネ科単一的草地8±2g/m2、マメ混生草地4±2g/m2、リン酸、カリ施肥量を両草地とも4±1g/m2、5±1g/m2と設定できる。
[キーワード]
- 施肥、乳牛、放牧草地、養分循環
[担当]道立根釧農試・研究部・草地環境科、乳牛飼養科、上川農試・天北支場・技術普及部、北海道農研・集約放牧研究チーム
[代表連絡先]電話0153-72-2004
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
- 放牧草地における現行の北海道施肥標準は、地域、土壌および草種構成に応じて設定されているが、これらの施肥量には、放牧牛によるふん尿還元が十分考慮されているとは言い難い。一方、すでに道北のペレニアルライグラス(PR)、道東のチモシー(TY)を基幹とする集約放牧草地では、現行よりも少ない施肥適量が提案されている。しかし、両草種とも北海道内の栽培適地が限定されるので、道内全域に共通した放牧草地における施肥の論理は、未だ構築されていない。そこで、本課題では、近年道内ほぼ全域で利用可能であることが確認されたメドウフェスク(MF)を供試し、これとTY、PRなどとの比較により、北海道内共通の論理に基づく放牧草地の標準施肥量を設定する。
[成果の内容・特徴]
- 放牧草地では、牛の採食・排泄行動の結果、草地から肥料として有効な養分が減少する。これを、放牧による肥料換算養分の減少量とする。また、年間施肥量から放牧による肥料換算養分の年間減少量を差し引いた値を、養分収支とする(図1)。
- マメ科牧草の混生した放牧草地における窒素(N)の収支は、平均-3〜-4g/m2で負の値となり、収奪傾向が予想される。しかし、終牧後における土壌の培養N量には、3年間明瞭な低下傾向が認められない。これを混生するWCのN固定による効果であると考え、その量を3-4g/m2程度と見なす(図2)。
- MF、TY、PR、OGのそれぞれを基幹とする放牧草地延べ48事例について、放牧による肥料換算養分の減少量を求めると、基幹草種の違いと地域間差には一定の傾向が認められず、年間被食量との間に有意な相関関係を得る(図3)。
- 得られた回帰式によって、年間被食量の水準別に肥料換算養分の減少量を求め、これに基づき、放牧草地における年間施肥量を、道内全域各土壌共通の値として設定する。本施肥量には代表値と幅を示してある。初年目に代表値の施肥量で試行し、草量の充足度と土壌診断の結果に応じて、示された幅の中で調整を行い、次年度以降に草地ごとの標準量を設定する(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 初産以降の乳牛放牧専用草地における標準施肥量として活用する。
- 本施肥量は、併給飼料によってCP摂取量を調節する飼養管理と、小〜中牧区輪換・昼間〜昼夜放牧の条件で設定した。したがって、2-3時間の時間制限放牧のように、採食量と排泄量の比が大きく異なる放牧条件には適用できない。
- 放牧条件は基幹草種ごとに設定されている条件に準拠する。
- 施肥配分は、現行の北海道施肥標準に準じて、早春、6月下旬、8月下旬の年3回均等分施を基本とし、基幹草種ごとに設定されている分施法に準拠する。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
養分循環に基づく乳牛放牧草地の施肥対応(普及推進)
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:寒地中規模酪農における集約放牧技術の確立、環境保全型家畜ふん尿循環利用システム実証事業
予算区分:独法受託、農政部事業(ふんプロ)
研究期間:2003〜2007年度(平成15〜19年度)
研究担当者:三枝俊哉、西道由紀子、大塚省吾、須藤賢司
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