放牧地における牛の嗜好性を左右する要因
[要約]
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放牧草の嗜好性に対し、高消化性繊維(Oa)を除く主な繊維分画は負の、Oaおよび水溶性糖類(WSC)+Oaは正の影響を及ぼす。N過剰施用、ゲートからの距離、掃除刈り残渣の存在が嗜好性を低下させる要因となる。
[キーワード]
- 放牧、メドウフェスク、嗜好性、飼料成分、掃除刈り
[担当]道立畜試・環境草地部・草地飼料科
[代表連絡先]電話0156-64-5321
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
- 研究成果情報は放牧草の嗜好性を左右する要因を整理し、嗜好性の良い放牧草地の管理方法についての情報を提供することを目的とする。
[成果の内容・特徴]
- 長方形牧区(奥行き/幅比=7.18、中央と最奥に高低差2〜3m程度の凹地あり、ゲート付近に水槽設置)では、暑熱ストレスを受ける条件などによりばらつくが、ゲートからの距離が遠くなるほど放牧地の利用性が低下する(図1:放牧頭数;搾乳牛42〜49頭、一頭あたり牧区幅0.8〜0.9m)。
- 1の牧区における4カ年9回の行動観察結果では、ゲートからの距離と成分含量に相関はなく、各ブロックの放牧草(MF)成分の牧区平均比と採食行動割合の相関を調べたところ、ADFおよびADF×Ob/OCWは負の、OaおよびWSC+Oaは正の影響を及ぼすことが示唆される(表1)。ADF×Ob/OCWはADLリグニンと相関の強い項目である。成分変動要因の一つとして牧区内の起伏に起因する肥料養分の偏りが考えられる。
- 窒素を過剰に施肥した牧草(2N区)は標準施肥した牧草(標準区)と比較して、CPおよびOa含量が高くなり、その他の繊維およびWSC含量が低下傾向を示し、嗜好性は明らかに低下する(表2)。
- 施肥成分量は一定とし、酸性促進型と中性維持型を想定した施肥資材の組み合わせ間で一対比較法により嗜好性を検定したが、短期的には両者に差は認められない(データ省略)。
- 牧区内に掃除刈り残渣残置区と持ち出し区を配置し、処理後約3週間後に肉牛を入牧し採食行動を観察した結果、3回の調査すべてで残置区での採食行動割合が低かったことから(表3)、夏場の放牧草嗜好性向上のために掃除刈り残渣の持ち出しが有効である。
[成果の活用面・留意点]
- 放牧地の管理方法研究の参考となる。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「放牧地における牛の嗜好性を左右する要因の検討」(研究参考)
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:食草時間計測装置活用による適正栄養管理技術の開発
予算区分:交付金プロ(集約放牧)
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者: 出口健三郎、中村克己、飯田憲司
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