めん用秋まき小麦「きたほなみ」の高品質安定栽培法
[要約]
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「きたほなみ」の標準栽培法は、道央・道北地域では播種適期が積算気温520〜640℃を確保できる期間、播種適量が170粒/u、同じく道東地域では470℃前後、200粒/uである。総窒素施用量は「ホクシン」より4kg/10a程度増肥し、追肥時期は止葉期が有効である。
[キーワード]
- めん用秋まき小麦、きたほなみ、播種期、播種量、窒素施肥法、子実タンパク質
[担当]道立中央農試・生産環境部・栽培環境科、作物研究部・畑作科、道立上川農試・研究部・畑作園芸科、道立十勝農試・生産研究部・栽培環境科、道立北見農試・作物研究部・麦類科
[代表連絡先]電話0123-89-2581
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
- 新品種「きたほなみ」は、既存品種「ホクシン」と比較して製粉性、めん色が優れ、多収であり、耐穂発芽性が優れ、今後広く道内で栽培される可能性が高い。しかし、子実タンパク質がやや低いなど生育特性が異なる。そこで、「きたほなみ」の特性を発揮させるため子実タンパク質の品質評価基準値(9.7〜11.3%)を目標に、高品質、安定生産を目指した栽培法(播種期、播種量、窒素施肥法)を、「ホクシン」との比較で明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 「きたほなみ」は「ホクシン」に比べて、越冬前の生育量がやや小さいが、越冬性に大きな問題がない(表1)。そのため、越冬前主茎葉数の目標値は0.5葉少なく設定される。穂数および一穂粒数が多く収穫指数(HI)が高いことから、子実重は約20%多収であるが、子実タンパク質は0.8〜1.0ポイント程度低く、品質評価基準の下限値を下回る事例が多いので、タンパク質の向上が求められる。タンパク質は止葉期追肥で最も上昇効果が高い(図1)。
- 道央・道北地域における播種適期は越冬前の主茎葉数が5.5〜6.5葉となる期間で、積算気温では520〜640℃を確保する期間(9月中旬前後)である(図2)。播種適量は170粒/uで、目標葉数は700本/uであるが、気象条件が厳しく穂数が十分確保できない地帯では255粒/uまで増やすことで収量は安定する(表2)。また、やむを得ず早播する場合には、倒伏を軽減するために播種量を100粒/u程度まで減らす。標準的な窒素施肥体系は、基肥-起生期-止葉期に各4-6-4kg/10a(「ホクシン」では4-6kg/10a)を施用する。ただし、収量水準が高く、あるいは養分吸収が阻害される圃場で、低タンパク質が懸念される場合は、さらに幼穂形成期に追肥(上限4kgN/10a)もしくは開花後に尿素2%溶液の葉面散布(3回程度)を行う。
- 道東地域における播種適期は越冬前の主茎葉数が5葉前後となる積算気温470℃を確保する日を中心とした5日間程度である(9月中旬〜下旬)。播種適量は200粒/uで、目標穂数は700本/uであるが、やむを得ず播種が遅れる場合は255粒/uを上限として増やす。窒素施肥体系は、基肥-起生期-止葉期に4-A-4kg/10a(「ホクシン」では4-Akg/10a)を施用する。A値は表3に示す窒素追肥量で、追肥量が多い場合や倒伏しやすい圃場では幼穂形成期に分施する。ただし、収量水準が高いあるいは養分吸収が阻害される圃場で、低タンパク質が懸念される場合は、さらに開花後の尿素2%溶液の葉面散布(3回程度)を行う。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は、品質取引基準値(新ランク区分)の導入に対応した「きたほなみ」の基本的な栽培技術として利用する。
- 播種適期は、11月15日までに達する日平均気温(3℃以上)の積算値より算出した。
- 低タンパク質が懸念される場合の目安は、「ホクシン」の子実タンパク質が9.7%未満となりやすい圃場である。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「めん用秋まき小麦「きたほなみ」の高品質安定栽培法」(普及推進)
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:新ランク区分に対応した小麦有望系統の高品質安定栽培法の確立、道央地域における秋播小麦有望系統の高品質多収肥培管理技術の開発、道東地域における秋播小麦有望系統の高品質多収肥培管理技術の開発
予算区分:受託(民間、ブランドニッポン)
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:須田達也、小野寺政行、佐藤仁、神野裕信、佐藤三佳子、鈴木和織、佐藤康司、竹内晴信、中津智史、西村努、吉村康弘
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