高設・夏秋どりいちご「エッチエス-138」の養液管理および窒素栄養診断技術
[要約]
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高設・夏秋どりいちご「エッチエス-138」の養液窒素管理基準および各生育ステージにおける窒素栄養診断基準値を設定した。これらの活用により、収穫期途中での収量減少が緩和し、安定的な生産が可能になる。
[キーワード]
- 夏秋どりいちご、高設栽培、安定生産、養液窒素管理法、窒素栄養診断法
[担当]道立道南農試・研究部・栽培環境科、作物科
[代表連絡先]電話0138-77-8116
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
- 高設・夏秋どりいちごは市場のニーズが非常に高く、作業性が良好なため、生産拡大が期待されている。しかし、養液の濃度管理などの要因により、収穫期間途中で急激に収量が減少する「成り疲れ」の症状を起こしやすい。そこで養液の窒素管理法および窒素栄養診断法を確立し、高設・夏秋どりいちごの生産安定化を図る。
[成果の内容・特徴]
- 全生育期間中の養液濃度が高いほど果実収量は増加するが、果実のBrix値は低下し、酸度は高くなる傾向にある。窒素施肥量に対する窒素吸収量の割合は施肥量が多くなるほど低下する(データ略)。
- 果実総収量および可販果収量は養液の窒素濃度配分を花房養成期および株養成期に中程度(50mgN/L)、前期収穫期では高濃度(75mgN/L)、中休期は中程度(50mgN/L)、後期収穫期では無駄な養分の供給を抑えるために低濃度(25mgN/L)とした処理区(NNHNL)において高く、同区は収穫途中での収量減少が緩和し、施肥窒素量に対する窒素吸収量の割合も高くなる(表1)。
- 葉位別葉柄硝酸濃度は各区とも上位葉で低く、下位葉ほど高くなり、時期とともに高まる傾向にある。養液濃度の上昇に伴い葉柄硝酸濃度は高まっており、これを測定することによって体内の窒素栄養を把握することが可能である(データ略)。
- 果実の前期収量は直前の葉柄硝酸濃度が500〜1500mgNO3/kgFWをはずれると低収になり(図1左上)、中休期収量は1000以下、2700mgNO3/kgFW以上で低収の傾向(図1、右上、左下)、後期収量は1200〜2700mgNO3/kgFWの間で高収になる傾向を示す(図1右下)。
- 以上のことから、安定的な収量確保のための養液窒素管理基準を設定し(表2)、さらに窒素栄養状態の確認のための各生育ステージにおける窒素栄養診断基準値も併せて設定する(表3)。
これらの養液管理および窒素栄養診断技術基準により、高設・夏秋どりいちご「エッチエス-138」の収量安定化が図られる。
[成果の活用面・留意点]
- 窒素栄養診断基準値からはずれた場合は養液濃度の調整をし、1週間後に再測定する。
- リン酸と加里の施肥配分は窒素施肥と同じとする。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「高設・夏秋どりいちご「エッチエス-138」の養液管理および窒素栄養診断技術」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:窒素栄養診断に基づく高設・夏秋どりいちごの安定生産技術の確立
予算区分:道単
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:日笠裕治、大宮 知、福川英司、中住晴彦
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