北海道における有機性廃棄物によるカドミウム負荷の実態と土壌・作物へのリスク軽減策
[要約]
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北海道で発生する有機性廃棄物に由来するカドミウム(Cd)の農地への負荷量は、全耕地面積当たり年間0.27g/10aである。北海道施肥ガイドに準じた施用量の範囲では、作物のCd濃度はコーデックス基準値を下回っており、また、作物のCd吸収を抑制するために土壌pHの管理が重要である。
[キーワード]
- 有機性廃棄物、カドミウム、野菜、畑作物、牧草
[担当]道立中央農試・環境保全部・農業環境科、道立道南農試・研究部・栽培環境科、道立上川農試・天北支場・技術普及部
[代表連絡先]電話0123-89-2582
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
- 家畜排泄物等の有機性廃棄物を肥料として利用することは、有機農業の促進、循環型社会の形成に寄与する。しかし、有機性廃棄物を利用するには、それらに含まれている有害物質、特にCdの負荷量や土壌・作物への影響を調査しておく必要がある。そこで、本道で発生する有機性廃棄物のCd濃度や利用実態に基づき、有機性廃棄物由来のCd負荷量を明らかにし、施用に伴う土壌・作物へのCdリスクの軽減策を検討する。
[成果の内容・特徴]
- 北海道で年間に発生する有機性廃棄物由来のCd7,855kgのうち、農業由来の約95%(2,033kg、主に家畜ふん尿)、非農業由来の約20%(1,160kg、水産系およびし尿汚泥等)が農地に負荷されており、全耕地面積に対する農業由来の有機性廃棄物Cd負荷量は0.17、非農業由来は0.10、全体で0.27g/10aと試算される(表1)。
- Cdの平均濃度(mg/kg現物)はホタテウロが18.1と極めて高く、下水汚泥・事業生活ゴミは0.5以下である(表2)。農業由来の稲わら・麦稈・乳牛ふん尿はいずれも低く、0.1を下回っている。野菜・牧草は、それぞれ0.06以下、0.11以下とコーデックス基準や飼料の有害物質の指導基準より低い。
- 野菜畑においてCd濃度の低い牛ふん堆肥区と対照区では、トマト残さの搬出に伴うCd持ち出し量が負荷量を上回るが、Cdを多く含む水産系堆肥区では土壌にCdが蓄積する(表3)。トマト果実のCd濃度は0.02〜0.03(mg/kg現物)と低かった。
- 畑作物・牧草のCd濃度(mg/kg)は大豆子実が0.02〜0.03、小麦子実が0.05〜0.08、小豆子実が0.01未満、およびチモシーが0.02〜0.03と低く、処理間差も認められないが、これらの作物でも有機性廃棄物資材施用に伴い、Cd収支がプラスとなるため、Cd負荷量の増加に伴って土壌蓄積するCdが高まる方向である。
- 各種有機性廃棄物資材によるCd負荷量と土壌の0.1MHCl-Cdの増加量の間には直線関係がみられ、回帰式からCd負荷量25g/10aあたり土壌の0.1MHCl-Cdは0.1mg/kg増加することが示された(図1)。
- 炭カル施用による土壌pHの上昇で作物のCd濃度は低下するが、経年的なpH低下に伴い低減効果はなくなる(図2)。また、堆肥連用により作物のCd濃度は20%程度低減した。
[成果の活用面・留意点]
- 農地に対するカCd負荷を考慮した有機物利用管理に活用できる。
- 土壌のCd濃度は有機性廃棄物施用に伴うCd負荷量に従い高まることから、Cd濃度の高い資材の施用には留意する。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「北海道における有機性廃棄物によるカドミウム負荷の実態と土壌・作物へのリスク軽減策」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:有機性廃棄物利用に伴うカドミウム負荷のリスク評価とその軽減対策技術の確立、施設栽培における漁業系有機性資源の有効利用と施用基準設定
予算区分:受託(独法)・道費
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:中本洋、細淵幸雄、古館明洋、松本武彦、乙部裕一
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