緩衝帯による草地からの養分流出削減策
[要約]
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草地からの養分の表面流出を削減するには、表面流出水の出口に浸入能の高い緩衝帯を設置して浸透させることが有効である。この時地下浸透する一部の窒素を削減するには、河畔緩衝林帯を設置し、地下水の硝酸態窒素濃度を低下させることが有効である。
[キーワード]
- 緩衝帯、浸透、草地、地下水、表面流出、削減、窒素、リン
[担当]道立根釧農試・研究部・草地環境科、寒地土木研・水利基盤チーム
[代表連絡先]電話0153-72-2004
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
- 草地に隣接する緩衝帯は、融雪時の大量の養分流出を防止できないが、夏季の降雨時の養分流出削減には効果を発揮することが知られている。そこで、緩衝帯の負荷物質低減効果を1.養分の表面流出量の削減効果、2.地下水の水質改善効果の2点について解析し、緩衝帯の設置による草地からの養分流出削減策を提示する。
[成果の内容・特徴]
- 表面流出削減効果
1)緩衝帯に土砂やスラリーの混合水を流下させると、植生の違いに関わらず、水のしみ込みやすさを示す侵入能(ベーシックインテークレート、以下Ib)の大きな緩衝帯ほど、表面流出水量を減少させ、土砂、全窒素および全リンの除去率を高める(データ省略)。
2) 草地から表面流出水が系外に流出する場所に設置した浸入能の高い緩衝帯(幅5m、Ib:694mm/h、図1)は、集水面積約0.5ha、Ib: 6mm/hの草地から表面流出する水量、全窒素量および全リン量を各々68%、62%および73%削減する(図2)。この時、全リンの地下浸透量は流入量の2%と非常に少ないが、全窒素は14%が地下浸透する(図2)。
3)緩衝帯による養分の表面流出削減は、Ibの小さい緩衝帯を広く設置するより、小面積でもIbの大きい緩衝帯を設置する方が土地利用上効果的である。また、集水域面積が広いなど緩衝帯への流入水量が多い条件では削減率の低下が予想される(表1)。
- 地下水質改善効果
1) 表面流出水が地下浸透する場所に設置した地下水位の高い河畔林帯(河畔緩衝林帯、図1)では、地下水が斜面下方向に横浸透するに従って、硝酸態窒素濃度が低下する。25m程度の緩衝林帯幅があれば、地下水の硝酸態窒素濃度を、流入時の20%以下もしくは、0.1 mg/L以下まで低下させる(図3)。
2)河畔緩衝林帯における地下水の硝酸態窒素濃度と塩化物イオン濃度の動態から、地下水中硝酸態窒素濃度の低下割合の内訳は、降雨直後では地下水による希釈が1/4で、残りが脱窒や植物吸収等の生物的除去によると推定される。降雨から5日後では、低下割合の大部分が生物的除去によると推定される(データ省略)。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は草地から流出する土砂・養分を削減するための緩衝帯設置の参考になる。
- 本成果は夏期間の試験結果によるものである。融雪時には土壌が凍結していて地下浸透が起きないため、融雪時には効果は期待できない。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「緩衝帯による草地からの養分流出削減策」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:緩衝帯の設置方法と効果の検討
予算区分:国費受託(公害防止)
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:酒井治、鵜木啓二、多田大嗣、三枝俊哉、中村和正
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