強熱減量による田畑輪換土壌の湛水培養窒素量の評価法
[要約]
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土壌を650℃、1.5時間処理することによる重量減少率(強熱減量)から、田畑輪換土壌の湛水培養窒素量を推定することができる。黒色火山性土や腐植含量の多い褐色低地土では強熱減量から250℃、1時間処理による重量減少率を差し引くことで評価が可能である。
[キーワード]
- 強熱減量、田畑輪換土壌、湛水培養窒素
[担当]北海道農研・北海道水田輪作研究チーム
[代表連絡先]電話011-857-9260、電子メール seika-narch@ naro.affrc.go.jp
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
- 環境に配慮した土壌管理を行うためには、土壌の可給態窒素量を春先の短期間のうちに推定して合理的施肥管理に結びつける必要がある。田畑輪換土壌については、0.5%のSDS溶液を使用して土壌からの可給態窒素量(湛水培養窒素量)を推定する方法が開発されている(平成18年度 成果情報)。しかし、この方法では抽出液の吸光度を求めるために、比色計や遠心操作が必要であり,未熟な有機物の混入や資材等の投入によって交換性塩基含量が高くなると信頼度が低下するという問題がある。そこで、さらに簡便で信頼のおける湛水培養窒素量の評価法について検討する。
[成果の内容・特徴]
- 土壌(泥炭土、灰色低地土、火山灰土、褐色低地土 10〜20g)を磁性るつぼに取り、電気炉で650℃、1時間半処理し、処理前後の重量を測定して重量の減少率を強熱減量(%)として求める。泥炭土や灰色低地土、褐色低地土については、強熱減量と土壌の湛水培養窒素量(30℃,28日間培養)との間には高い相関関係が示され、この関係は年次によって大きくは変わらない(図1)。
- 田畑輪換土壌の腐植含量と強熱減量とは相関関係を示し、火山灰土は同じ腐植含量でも泥炭土や灰色低地土よりも強熱減量が多い傾向にある(図2)。
- 黒色火山性土や強熱減量が9%を超える暗色表層褐色低地土では強熱減量と湛水培養窒素量との関係が認められないが(図1)、650℃における強熱減量から250℃、1時間処理による重量減少率を差し引く補正を行うことで、同じ直線上で強熱減量から湛水培養窒素量を評価することが可能である(図3)。
- 上記の関係から、[湛水培養窒素量]=6.3×[強熱減量]−40.3 の回帰式が得られ、この式により湛水培養窒素量を推定することができる。
[成果の活用面・留意点]
- 黒色火山性土と暗色表層褐色低地土は北海道農牧地土壌分類に基づいている。
- 基盤整備などにより客土が行われて間もない泥炭土や、未分解の下層泥炭が混入したり、未熟有機物が投入された土壌では直線関係から外れることがある。
- 水稲の収量や精米タンパク質含量などの生産目標に応じた、窒素施肥設計をたてる場面などで活用する。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:北海道地域における高生産性水田輪作システムの確立
課題ID:211-k
予算区分:基盤
研究期間:2006〜2010年度
研究担当者:安田道夫、君和田健二、大下泰生
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