道東採草地の温室効果ガス発生量評価と堆肥等肥培管理による低減の可能性
[要約]
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化学肥料単独で施肥管理する採草地では、炭素収支は均衡し、温室効果に与える影響は小さい。堆肥施用は、亜酸化窒素発生量を増大させるが、炭素の蓄積により、温室効果を抑制させる。窒素施肥法の改善により亜酸化窒素発生量を低減できる可能性がある。
[キーワード]
- 温室効果、堆肥、施肥管理、NBP、亜酸化窒素、GWP
[担当]道立根釧農試・研究部・草地環境科
[代表連絡先]電話0153-72-2843
[区分]北海道農業・生産環境、共通基盤・土壌肥料
[分類]研究・参考
[背景・ねらい]
- 各農業分野において温室効果ガス放出を制限した管理体制の構築が求められている。しかし、北海道東部の採草地は、炭素収支を含めた温室効果ガスの発生実態が詳細に調査されていない。また、堆肥の施用は採草地へ炭素を蓄積させることにより、窒素施肥法の改善は亜酸化窒素放出量を低減させることにより、それぞれ温室効果を低減させる肥培管理として期待される。そこで、採草地の温室効果ガス発生実態を解明と温室効果に与える影響を評価するとともに、堆肥の施用および窒素施肥法の改善が温室効果の低減に与える効果を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 化学肥料単独で施肥管理する採草地のNEPで示される二酸化炭素吸収量は、堆肥を施用する施肥管理よりも大きい。しかし、牧草収穫による炭素が搬出されるので、NBPで示される炭素収支は均衡する。一方、堆肥を施用する施肥管理では、堆肥施用による炭素搬入によりNBPが化学肥料単独の施肥管理よりも増加する。すなわち、採草地への炭素の蓄積が認められる(表1)。
- 化学肥料単独で施肥管理する採草地では、メタンの僅かな吸収および亜酸化窒素の放出が認められる。これに、堆肥を施用すると、メタンは変化せず、亜酸化放出量は増加する(表2)。
- 化肥料単独で施肥管理する採草地の温室効果を地球温暖化指数(GWP)で評価すると、温室効果の促進または抑制に与える影響は小さい。一方、堆肥を施用する施肥管理では、炭素蓄積の効果が大きく、温室効果は抑制されると評価される(表2)。
- 全体の窒素施肥量を変えずに、早春施肥の配分を高めた施用法の亜酸化窒素発生量は、標準の施用法に比べ、平均で36%低下する(図2)。同じく硝酸化成抑制剤を用いた施用法により、亜酸化窒素発生量を22〜41%低下させる(図3)。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は、国内草地の二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素の年間収支査定のための基礎資料および温室効果抑制技術開発の参考として活用できる。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「北海道東部の採草地における温室効果ガスの発生量評価と低減の可能性」(研究参考)
[具体的データ]
[その他]
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研究課題名:極寒冷平坦チモシー草地地帯における堆肥ならびに化学肥料施用条件下におけるCO2,CH4,N2Oの温室効果ガス収支の観測・測定及び草地生態系生産量の測定、わが国のアジア諸国の農耕地から実効的CH4,N2Oソース制御技術の開発
予算区分:国費受託、民間受託
研究期間:2004〜2007年度
研究担当者:有田敬俊、甲田裕幸、三枝俊哉
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