都市化影響の僅かな地点における気温の長期上昇程度
[要約]
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北海道農研は札幌市内に位置するが、広大な緑地から成り、都市化影響が僅少な環境である。北海道農研で観測された過去40年間の気温の長期上昇程度は、日本の気温上昇の評価に使用される寿都などの気象観測所における値より低い。
[キーワード]
- 温暖化、都市化影響
[担当]北海道農研・寒地温暖化研究チーム
[代表連絡先]電話011-857-9260、電子メール seika-narch@naro.affrc.go.jp
[区分]共通基盤・農業気象、北海道農業・生産環境
[分類]研究・参考
[背景・ねらい]
- 地球温暖化が進行している。これとは別に、人工構造物の影響(都市化影響と呼ばれる)による気温上昇も進んでいる。多くの気象観測所の近傍には人工構造物があり、地球温暖化と都市化影響を合計した気温上昇が観測されている。一方、北海道農業研究センター(北海道農研)は札幌市内に位置するが、敷地823haが巨大な緑地を形成しており、かつ気象観測地点の近傍に人工構造物が少ないため(図1)、都市化影響が僅少な環境における気温の長期上昇程度を把握できる。
[成果の内容・特徴]
- 北海道農研の40年間の年平均気温の上昇程度は0.009℃/年である(図2)。
- わが国では、寿都など、都市化などによる環境の変化が比較的少ない地点(気象庁)の気象観測データが、温暖化による気温の長期上昇程度を把握するために使用されている。しかし、北海道農研における気温上昇程度は、これら観測所における40年間の気温上昇程度(寿都では0.021℃/年である:図3)よりも低く、都市化の影響がきわめて小さいと考えられる。
- したがって、都市化影響の僅少な地点における気温の長期上昇程度は、上記の寿都など気象観測所データにもとづくわが国平均気温の上昇程度より小さいと考えられる。
[成果の活用面・留意点]
- 人口構造物の少ない農業地帯など、都市化影響の僅少な地域での気温上昇程度を論ずる上で参考となる。
- 本成果は、北海道農研1地点の観測にもとづくものである。今後さらに、農業研究機関等、広大な緑地敷地を有し都市化影響(人工構造物の影響)が僅少な地点での長期の気温モニタリングを行うことが重要である。
- 本気象観測に使用した測器や観測方法などの詳細は北海道農研研究資料第67号 (Sameshima et al., 2008, in press)に記載される。
- 北海道農研の気象データは以下のURLで公開されている:
http://cryo.naro.affrc.go.jp/kisyo.html
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:寒地における気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
課題ID:215-a
予算区分:基盤
研究期間:2006〜2007年度
研究担当者名:鮫島良次、廣田知良、濱嵜孝弘、鈴木伸治(東京農大)
発表論文等:Sameshima et al.(2007) J. Agric. Meteorol. 63:95-102
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