入気口前散水による温度勾配チャンバー内の温度環境改善
[要約]
-
温度勾配チャンバー(TGC)の入気口前で霧状散水することにより、TGC内に外気より低い気温からの温度勾配を容易に作りだせる。
[キーワード]
- TGC、散水、気化冷却
[担当]北海道農研・寒地温暖化研究チーム
[代表連絡先]電話011-857-9260、電子メール seika-narch@naro.affrc.go.jp
[区分]北海道農業・生産環境、共通基盤・農業気象
[分類]研究・参考
[背景・ねらい]
- 温度勾配チャンバー(TGC)は、細長い温室の妻面に排気ファンを設置し、反対側妻面の入気口から取り入れた外気を日射やヒーターにより徐々に昇温させ、内部に連続的な気温分布を得る実験装置である。気温や日射の日々の変動や日長時間が戸外と類似になる利点があるが、入気口付近の気温が戸外より高くなる問題がある。このため、同一気温条件における戸外とTGC内の生育比較や、戸外気温からの連続的な気温上昇に対する生育反応を調べる実験に供することが難しかった。入気口前に冷房機を設置するとこの問題を回避できるが高コストである。そこで、気化冷却を利用した簡易な装置による気温低下を試みる。
[成果の内容・特徴]
- TGC(本事例の仕様を表1に示す)の入気口前で霧状散水すると(図1)、TGC内に、外気よりやや低い気温から2℃程度高い気温が得られる(図2)。
- ただし、気化冷却に伴う空気の加湿のため、飽差は大きく低下する(図3)。また、本事例のヒーターでは夜間のTGC内気温差は1℃程度である(図4)。
- サーキュレーターを設置し、チャンバー天井付近に滞留する暖気(バックフロー)を床面付近の空気と混合することで(図5)、温度分布が改善する(図4の「改善」部分)。
[成果の活用面・留意点]
- TGC内に、TGC設置地点の、やや過去〜数十年将来までの気温条件を容易に模擬再現できるので、温暖化影響評価の現地実証的実験に供することができる。
- 散水型TGCでは、飽差が低くなる点に注意を要する。
- 夜間ヒータの強化、換気ファンの増設により、夜間気温差の増加、昼間気温差の減少が期待できる(図4参照)。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:寒地における気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
課題ID:215-a
予算区分:基盤
研究期間:2006〜2010年度
研究担当者:鮫島良次、濱嵜孝弘、廣田知良
目次へ戻る





