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タヌキの生態

  • 分布
  • 形態
  • 生息環境
  • 食物
  • 繁殖
  • 社会性
  • 感覚
  • 運動能力
痕跡
  • 足跡
  • ため糞
  • 咬み跡
分布 北海道のエゾタヌキと,本州・四国・九州に生息するホンドタヌキの2亜種.島嶼では,奥尻島,佐渡ケ島,淡路島,小豆島,大島(屋代島),向島,壱岐,平戸島,鷹島,天草諸島,甑島.隠岐(知夫里島)と屋久島には人為移入.

図.タヌキの分布(2003)
第6回自然環境保全基礎調査「種の多様性調査 哺乳類分布調査報告書」環境省自然環境局生物多様性センター「生物多様性システム」 より引用

形態 体重3-6kg,季節差が大きく,晩秋に最大となる.尾長18cm程度を含む全長70-80cm,後肢長10-11cm,耳長4-5cm,性的二型はほとんど見られない.耳はやや丸く,目の回りに黒いマスクがあり,肩や足も黒い.毛色は薄いグレーから褐色または濃い灰色まで,バリエーションがある.歯は基本的にイヌと同じ3/3-1/1-4/4-2/3=42.足の指は5本だが,地面に付くのは4本(足跡はイヌと類似).
生息環境 主な生息地は,都市郊外から里山・低山にかけての,ある程度人の手の加わった地域で,緑地が連続している里地里山の林縁部を好む.東京23区や名古屋市中心部などにも生息する一方,標高2000m級の亜高山にも生息する.個体群密度は「西高東低」で,北海道は少ないと思われる.
食物 おもに果実や昆虫などの無脊椎動物を食べる好機主義的雑食性.量的には植物食を中心として,春には草本植物も食べ,夏から秋にかけて昆虫やミミズなどが多い.カキやイチョウの果肉は秋の重要な食物.地域によっては魚や甲殻類,小型哺乳類,大型獣の死骸,残飯や生ゴミも食べる.
繁殖 2-4月に交尾,受精可能期間は数日で,約2ヵ月の妊娠期間を経て,平均4-6頭を出産し,雌雄ともに子育てに参加する.
社会性 基本的に一夫一妻で,社会構成単位のペアは通年行動をともにする.他個体への許容性が高く,毎日の餌付けなどで10頭を越える空間グループを形成することがある.
感覚 臭覚および聴覚に優れていると思われる.視覚はあまり良くはないが,動くものは動かないものより捉えられる.
運動能力 一芸に秀でていない代わりに,一応何でもこなす.木も登り,爪や指が掛かればフェンスも登ることができる.地面は体が通るくらいは掘り下げることができる.泳ぎも問題なく,狭いところを通り抜けることが得意.
参考文献:佐伯(2008)

痕跡
足跡 縦・横が3.5〜4センチ、4本指で爪痕が突く。歩行は蛇行していることが多い。
タメフン 同じ場所に糞をする習性があり、大きなものでは直径1メートルくらいになる。独特なニオイがあり、古いものでは食べたイチョウやトマトなどの芽がでていることもある。
ガードヘア:一本一本は、少し縮れており、2/3ほどは白っぽいベージュで、毛先1/3は黒っぽい。アンダーヘア:細くて単色の綿毛。
咬み跡 1.8cm前後の間隔で二つ穴があるのは、犬歯が貫通した跡である可能性が高い。


参考・引用文献
佐伯 緑 2008 第12章 里山の動物の生態−ホンドタヌキ. 「日本の哺乳類学」第2巻 東京大学出版会 321-345
佐伯 緑・竹内正彦 2008 タヌキによる農作物被害の現状とその対策(1)−タヌキの生態と農作物被害の現状−. 農業および園芸 83 (6) 657-665
竹内正彦 2007 イチゴ露地ほ場におけるアナグマの食害防護. 応用動物昆虫学会誌 51 (3) 187-196
竹内正彦 2008 みんなで考えよう タヌキ被害への対策. 果実日本 63 (1) 74-77
竹内正彦・佐伯 緑 2008 タヌキによる農作物被害の現状とその対策(2)−被害対策−. 農業および園芸 83 (7) 758-764