大豆作付予定の圃場におけるダイズ黒根腐病発病リスクの診断とその対策の手順
ダイズ黒根腐病(以下、黒根腐病)は、北日本を中心に発生が多く認められています。
いきなり大きな被害をもたらさないため、見過ごしがちですが、減収する原因となります。
気付かない内に蔓延するので、黒根腐病発病リスクをチェックしてみましょう!
まずは、圃場の履歴についてみてみます。
③黒根腐病の発病履歴を確認しましょう
下の写真を見て診断してください。
1.大豆葉に退緑壊疽斑(たいりょくえそはん:写真参照)が生じたことがある。その後黄化症状が株全体に進行し、早期に落葉、または枯死したことがある。
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2.大豆の地際・地下部に赤色の子嚢殻(しのうかく:写真参照)が形成されているのを観察したことがある。
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3.大豆を容易に引き抜くことができ、ゴボウ根状態となっていたことがある。写真3-4は、罹病根の切断面を示している。
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上の黒根腐病発病履歴診断から判断して、過去の発病が
あり
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不明
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なし
他の対策を優先しましょう。
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④各種診断項目と黒根腐病リスクの関連性および想定される対策
<栽培履歴> 次年度の作付計画を立てる時に
前年の作付は水稲ですか?
いいえ
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大豆連作年数は長いですか?
*その他の作物の場合は直近の大豆の連作年数で考えてください
長い
連作を回避して、水稲へ転換しましょう。
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短い
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大豆作付前の水稲連作年数は短いですか?
短い
水稲連作期間を延長しましょう。
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長い
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<播 種> 播種作業を始める前に
播種日はいつ頃を予定していますか?
播種時期を標準より遅らせることで黒根腐病の発病を抑制できることがあります。 詳細はこちらへ
一般的に、播種時期が遅い分、大豆収量が減少することも知られていますので、 過度の晩播は避けてください。また、栽培地域によって、 播種時期を遅らせた場合の効果が異なることも予想されます。
推奨されている播種時期より、早いですか?
早い
黒根腐病の発生が多い圃場を優先して遅らせましょう。
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普通 または 遅い
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畝立て播種1)等の湿害軽減様式の播種ですか?
平床
畝立て播種の検討をしましょう。
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畝立
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種子消毒に黒根腐病に効果がある薬剤2)を使用していますか?
はい
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いいえ
効果のある薬剤で種子消毒することによって、生育初期の大豆を保護しましょう。 |
<中耕培土> 中耕培土を実施する前に
1回目の中耕培土時期を遅らせることができますか?
はい
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いいえ
中耕培土が遅い方が黒根腐病リスクが低くなります。
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中耕培土を遅らせる場合には、土壌処理除草剤の効果状況や雑草の発生状況を考慮して対応してください。
中耕培土の回数を省略できますか?
はい
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いいえ
中耕培土の回数が多い程、黒根腐病リスクが高くなります。
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早期の中耕培土から優先的に省略してください。 但し、雑草の発生状況を考慮して対応するとともに、 中耕培土の省略は倒伏のリスクを高めることもありますので、 生育状況に応じた判断が必要です。
⑤上記の対策技術導入が
全て不可の場合
他の対策を優先しましょう。
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可の場合
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⑥対策技術の効果を確認しましょう。
あり
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なし
今まで示してきた対策のうち導入していない対策が
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⑧排水対策が有効な他の病害
地際部の病斑と萎凋
症状及び被害:どの生育時期のダイズでも罹る可能性がある。 不発芽の原因となる。地際部に褐色の病斑が現れて、胚軸や茎の周囲を取り囲み、 上部への進展が見られる。株は黄変、萎凋し、多くが枯死して欠株となる。
病原体と伝染:原因菌の周囲が水で満たされると伝染源となる遊走子が放出される。 また、耐久体である卵胞子は、土中で5年以上活性を保つ。圃場の浸水は激発する要因となりうる。
防除:発病履歴のある圃場では、播種前に圃場に排水対策を施すことや薬剤の種子塗抹による消毒が推奨される。
他の防除対策の事例:次世代土壌病害診断(ヘソディム)マニュアル内にある 「ダイズ茎疫病(富山県の事例)」を参考にして下さい。
上記の情報は予告なく変更されることがあります。 また情報の内容は2020年3月19日の時点での情報ですので、詳細についてはお近くの普及センター等へご確認下さい。
脚注
畝立て栽培することによって、鋤床に溜まっている水から大豆が相対的に隔離され、黒根腐病の被害が軽減されます。
こちらの湿害・排水対策③畝立栽培も参考にしてください。
その他にベンレート水和剤(ベノミル水和剤)が黒根腐病用の種子粉衣剤として、登録されております。使用にあたっては、農薬登録情報等を確認して使用して下さい。