飼料作物病害図鑑
トウモロコシ 北方斑点病 
リスク評価スコア2.3 (2,2,3)
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| 病徴（レース1） | 病徴（レース2） | 病徴（レース3） |
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写真上左：レース1（日本では未発生）の噴霧接種病徴。菌が宿主特異的毒素HC毒素を産生するため、トウモロコシ感受性品種のみ円形斑が出る。 写真上中：レース2の自然病徴（かすれ状の短い条斑）。 写真上右：レース3の自然病徴（条斑）。 写真下：分生子（葉上で形成され、風雨で飛散して蔓延） |
| 病原菌（分生子） |
病徴：主に冷涼地で発生する斑点性の糸状菌病害。梅雨期前後に下葉から発生し、周縁部褐色、中心部灰白色、条状、長さ0.5〜3cm、幅0.1〜0.5cm程度の中肋に沿った病斑を多数形成する。激発した場合、病斑が拡大・融合し、葉が枯れ上がる。この病徴はレース３によるもので、わが国での発生はこのレースが中心であるが、やや短い条斑を形成するレース２も発生している。特定のトウモロコシ系統に円形の病斑を形成するレース１は日本ではまだ発生していない。(西原 1981, 月星ら 1987a, 1987b)。
病原菌：Bipolaris zeicola (Stout) Shoemaker (=Cochliobolus carbonum Nelson)、子のう菌
病原菌は分生子が風雨で飛散して、まん延する。アメリカ産標準菌との形態比較および交配試験により、種同定された(月星ら 1986a, 1986b, 1986c)。北海道をはじめ、各地での発生報告がある(月星ら 2005c, 2005d)。
生理・生態：レース1はHCトキシンを、レース3はBZRトキシンを産生し、いずれも宿主特異的な毒性を示す環状ペプチドである。BZRトキシンは3種のco-toxinから成り、3種が同時に存在して初めてトウモロコシおよびイネに毒性を示し、菌の植物への侵入を促進する(Jin-Zhong Xiao et al. 1992)。BZR毒素の産生遺伝子の検出が試みられた(月星ら 1997b)。本菌は宿主非特異的毒素オフィオボリンを産生しない(月星ら 2002)。AFLPマーカーを用いた菌個体識別および染色体連鎖地図が作成された(菅原ら 2001, 2002b)。菌の染色体数は13本である(土屋・多賀 1999)。菌株間で抗生物質耐性に差異がある(月星 2003b)。
防除法：積極的な抵抗性育種は行われておらず、罹病性品種の連作を避けるなど圃場での菌密度を下げる対策が望ましい。市販品種の抵抗性検定が行われ、中生品種では品種間差異が認められている(菅原ら 2005)。輪作体系などの対策が示されている(橋爪 2001)。
総論：西原(1991): 標本写真とスケッチ, 月星(1999f: 菌の扱い方、菌株情報, 2019)
畜産研究部門（那須研究拠点）所蔵標本
| 標本番号 | 宿主和名 | 宿主学名 | 症状 | 採集地 | 採集年月日 | 採集者 |
| N15-11 | トウモロコシ | Zea mays L. | 北方斑点病? | 北小野 | 1969 | 柿本 |
(月星隆雄，畜産研究部門，畜産飼料作研究領域，2021）
本図鑑の著作権は農研機構に帰属します。
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