チモシーの病害 (2)


すじ葉枯病(suji-hagare-byo) Laef streak
病原菌:Scolecotrichum graminis Fuckel、不完全菌
 全国で発生する斑点性の糸状菌病。特に採種病害として重要。葉では初め葉脈間に褐色〜紫褐色、短い線状、長さ2ー3mm、幅0.5-1mmの病斑が現れる。これが徐々に伸びて長さ2ー3cmになり、相互に融合して、葉全体が灰白色に枯れる。枯れた病斑部には小さな黒点のようなかびがつくが、これは胞子で飛散してまん延する。病原菌はオーチャードグラス、トールオートグラスなどにも寄生するが、寄生性は分化していると考えられている。


すじ黒穂病(suji-kuroho-byo) Stripe smut
病原菌:Ustilago striiformis (Westendorp) Niessl、担子菌
 北海道で発生する糸状菌病。6-7月頃よく目立つ。葉、葉鞘、稈に黒色粉状の条斑を形成する。この黒い粉は黒穂胞子で、病斑表面が破れて裸出し、風雨で飛散してまん延する。病斑部分は後に裂けてくることが多い。罹病株は萎縮し、出穂できないことが多い。


鳥の目病(torinome-byo) Bird's-eye spot
病原菌:Ovularia pusila (Unger) Sacc. et D.Sacc.、不完全菌
 北海道で夏の終わりから秋にかけて発生する斑点性の糸状菌病。褐色、楕円形、大きさ2ー4×1mm程度の病斑が主に葉に多数形成される。病斑周囲には黄色のかさが形成され、鳥の目のような特徴的な病斑となる。病原菌はレッドトップ等の菌とは寄生性が異なる。


雪腐褐色小粒菌核病(yukigusare-kasshoku-syouryuu-kinkaku-byo) Typhula snow blight
病原菌:Typhula incarnata Lasch:Fries、担子菌
 株枯れを引き起こし、主に北海道で発生する重要病害。病徴は黒色小粒菌核病と類似するが、枯死部表面に形成される菌核が粟粒大、赤褐色である点が異なる。菌核は枯死植物の茎、葉、根などに形成される。病原菌は黒色小粒菌核病菌と近縁だが、より腐生性が強く、黒色小粒が発病した後に侵入し、混発するとされる。


雪腐黒色小粒菌核病(yukigusare-kokushoku-syouryuu-kinkaku-byo) Typhula snow blight
病原菌:Typhula ishikariensis Imai、担子菌
 株枯れを引き起こし、主に北海道で発生する重要病害。病徴は融雪直後から現れ、茎葉は水浸状になり、ゆでたように軟化して、乾くと灰褐色に変色する。この上には暗褐色〜黒色、球形〜不整形、直径0.5-1mm程度の菌核を多数形成する。病原菌は形態的に異なる3つの生物型に分類され、生物型Aは多雪地帯に、生物型Bは寡雪地帯に、生物型Cはいずれにも分布する。これらの菌群は分布だけでなく、寄生性及び稔性などでも異なる。


雪腐大粒菌核病(yukigusare-tairyuu-kinkaku-byo) Sclerotinia snow blight
病原菌:Myriosclerotinia borealis (Bubák et Vleugel) Kohn、子のう菌
 北海道、東北で株枯れを引き起こす重要病害。土壌凍結期間の長い地域に分布する。病徴は融雪直後に深緑色、水浸状になり、ゆでたように軟化する。乾くと灰褐色になり、その表面にネズミの糞状で、大きさ5-10mm程度の黒い大型菌核を形成する。晩秋には菌核からキノコが出て、感染源となる子のう胞子を飛散させる。病原菌は多犯性で、オオムギ、コムギ、フェスク、ライグラス、チモシー、レッドトップなどで発生が報告されているが、牧草の中ではオーチャードグラスおよびライグラスが最も弱い。

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