アルファルファの病害 (1)


モザイク病(mosaic-byo) Mosaic
病原:Alfalfa mosaic virus (AMV)、ウイルス
 アルファルファの代表的なウイルス病。病徴が現れやすい時期は春と秋であり、特に1番草刈取前後によく目立つ。温暖地では2年目の草地でほとんどの個体が感染する。初め若い葉で黄斑モザイクまたは緑斑モザイクを生じる。病気が進むと退緑斑、縮葉といった病徴が現れ、株全体が萎縮する。伝搬は主にアブラムシの吸汁により起こり、その他機械刈り等による汁液伝染や種子伝染も起こる。病原ウイルスには数多くのストレインがあり、ストレインにより病徴が微妙に異なるとされる。接種すれば少なくとも73属220種以上の植物に寄生する。


斑点細菌病(hanten-saikin-byo) Bacterial leaf spot
病原菌:Xanthomonas campestris pv. alfalfae (Riker, Jones and Davis) Dye 1978、バクテリア
 主に葉に発生する斑点性の細菌病。初め水浸状の微細な円形斑点だが、後に内部淡褐色、周縁部暗褐色、直径2-3mmの病斑になる。病斑周囲には黄色のハローを形成し、被害葉は奇形になる。


べと病(beto-byo) Downy mildew
病原菌:Peronospora trifoliorum de Bary、べん毛菌
葉に発生する糸状菌病。若い葉の葉縁から発生することが多く、退緑色、不定形の病斑となる。後に病斑は黄色っぽくなり、葉の裏に灰色のかびを形成するが、これは病原菌の遊走子のうである。やがて病斑部は縮み、褐変して、葉全体が枯死する。


葉枯病(hagare-byo) Stemphylium leaf spot
病原菌:Pleospora herbarum (Persoon) Rabenhorst、子のう菌
葉に多く発生する斑点性の糸状菌病。葉では初め内部は灰褐色、周縁は濃い褐色の小斑を形成する。やがて病斑の周縁は淡褐色に変わり、不鮮明な褐色輪紋をもつ3〜5mm程度の円形病斑に拡大する。病斑はしばしば葉縁から伸長して隣接病斑と融合して大型病斑となり、葉は縮んで枯れる。病葉は早期に落葉する。病原菌はアカクローバ葉枯病菌と同種だが、アカクローバにはほとんど寄生性を示さない。


葉腐病(hagusare-byo) Summer blight
病原菌:Rhizoctonia solani Kühn AG-1 TB, TA、担子菌
 全国で発生し、草地の夏枯の一因となる重要な糸状菌病。初め灰緑色、水浸状に葉が変色し、やがてゆでたように軟化していく。さらに病気が進むと、茎や葉が倒れて重なって腐り、これをつづり合わせるようにしてくもの巣状の菌糸が見られる。罹病植物上には、明褐色〜褐色、直径5mm程度の菌核が形成される。この時点で草地はつぼ状に枯れ、徐々に裸地化が進む。病原菌はほとんどのイネ科及びマメ科牧草を侵すきわめて多犯性の菌。TB菌およびTA菌が関与する。


灰色かび病(haiiro-kabi-byo) Gray mold
病原菌:Botrytis cinerea Persoon:Fries、不完全菌
地上部全体に発病する糸状菌病。よく繁茂した株の地際から発病し、初め葉や茎に水浸状の小斑点を形成し、やがて全体が褐色に軟化崩壊する。腐った部分にはネズミ色のかびを密生する。高温多湿時に多発する。


いぼ斑点病(ibo-hanten-byo) Common leaf spot
病原菌:Pseudopeziza medicaginis (Libert) Saccardo、子のう菌
冷涼多湿な時期に多く発生する斑点性の糸状菌病。葉、葉柄、茎を侵す。葉にはじめ針頭大、茶褐色の斑点を生じ、1-2mmの円形斑点となる。後に病斑中央部に濃褐色のいぼ状の子のう殻が生じ、多湿時にはこの部分がゼリー状を呈する。病斑が多いと、葉は黄褐色となり、落葉しやすくなる。病原菌はクローバいぼ斑点病菌とは別種である。


萎ちょう病(ichou-byo) Wilt
病原菌:Fusarium oxysporum Schlechtendahl f.sp. medicaginis (Weimer) Snyder et Hansen、不完全菌
北海道で発生し、株の萎凋を引き起こす糸状菌病。初め葉が黄化し、先端が萎凋する程度であるが、徐々に病状が茎全体に及ぶ。この時二次根の発達が悪く、主根の中心部は冠根部から根の先端まで褐変する。病勢が進むと、再生不良となり、徐々に衰弱枯死し、草地の衰退の原因となる。病原菌はアカクローバも侵し、沖積土壌に比べ火山灰土壌で発生が多いとされる。


菌核病(kinkaku-byo) Sclerotinia crown rot and root rot
病原菌:Sclerotinia trifoliorum Eriksson、子のう菌
 冷涼多湿地域で発生する、株枯を引き起こす重要な糸状菌病。秋に感染して初め小さな斑点が現れ、やがて葉や茎が黄化、枯死する。積雪下で徐々に進行し、翌年の春の融雪後、気温の上昇と共に一気に茎葉や根が灰白色に腐敗する。枯死した植物の表面には綿毛状の白い菌糸が多量に絡みつき、やがて黒色、不定形、大きさ8ー10mm程度の大型の菌核が形成される。これが秋に発芽して明褐色、かさの直径が3ー8mmのキノコを形成し、ここから胞子が飛んで再び感染が起こる。病原菌の寄主範囲は広く、クローバ類やベッチ類にも感染する。


茎枯病(kukigare-byo) Spring black stem
病原菌:Phoma medicaginis Malbr. et Roum. in Roum. var. medicaginis Boerema、不完全菌
 春先から茎枯および株枯を引き起こす糸状菌病。比較的低温でよく発生し、冷涼多湿時に激しくまん延する。初め下葉に黒から黒褐色の大小の病斑が多数現れ、これが葉柄や茎にも広がる。葉の病斑は融合し大きな病斑となり、葉は黄化、落葉する。病勢が進むと、多くの葉柄や茎が黒褐色に枯れ、地上部全体が黒く坪状に枯れる。病斑上には黒色の小粒(柄子殻)が形成され、ここから多湿条件下で胞子が風雨で飛散してまん延する。胞子は虫が体につけて運ぶこともある。病原菌は主にアルファルファを侵すが、接種すればクローバ、マメ類などに感染する。

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