アルファルファの病害 (2)


黒あし病(kuroashi-byo) Cylindrocladium root and crown rot
病原菌:Cylindrocladium floridanum Soybers & Seymour、不完全菌
株枯を引き起こす糸状菌病。地際部から上方数センチにわたり、茎を黒褐色の病斑が取り巻く。病斑表面はゴツゴツした感じで、わずかに陥没している。多くの病斑は皮層部にとどまり、根にはほとんど異常が認められなかった。病斑部には赤褐色の微小菌核が形成され、やがて地上部全体が黄化する。病原菌は多犯性で、クローバ類、トレフォイル、インゲンマメ、ダイズ、アズキにも病原性を示す。


紫紋羽病(murasaki-mompa-byo) Violet root rot
病原菌:Helicobasidium mompa Tanaka、担子菌
株枯を引き起こす糸状菌病。初夏に若い葉の葉先から枯れ始め、一気にすべての葉がしおれ、褐色に枯れていく。根は主根部が紫色のフェルト状の菌糸で覆われ、根内部は腐敗している。罹病根表面に紫紅色、直径1mm程度の菌核をつくることがある。病原菌はきわめて多犯性で、多くのマメ科作物の他、果樹にも寄生する。


黄斑病(ouhan-byo) Yellow leaf blotch
病原菌:Pseudopeziza jonesii Nannfeldt、子のう菌
葉に発生する斑点性の糸状菌病。初め葉が何となく色あせ、徐々に不定形、大きさ5mm程度の黄斑になっていく。中央部には黒粒点が現れ、やがて病斑は褐色になり、互いに融合して、葉全体がまくれ上がるように枯れていく。


さび病(sabi-byo) Rust
病原菌:Uromyces striatus Schroter、担子菌
典型的なさび病。夏胞子堆は赤褐色から褐色、小円形で、葉や葉柄に散在する。成熟すると表皮が破れて夏胞子を飛散する。冬胞子堆は暗褐色となる。病原菌の中間宿主は日本ではまだ確認されていない。


白絹病(shirakinu-byo) Southern blight
病原菌:Corticium rolfsii Curzi、担子菌
暖地での代表的な株枯性の糸状菌病。梅雨明け後、温度が上がってくると発生しはじめ、白い綿糸のような菌糸がみっしりと茎の基部や冠根部に絡みつく。罹病組織は徐々に褐変、崩壊していき、やがて地上部全体が枯死し、株枯に至る。また、枯れた葉や茎の上で菌糸が束状になり、その上に初め白色のちに黄褐色となる菌糸の塊が形成される。これは菌核で、土中で越冬して翌年の伝染源となる。罹病組織の残さ、菌核、菌糸の断片が風雨で飛散して伝搬する。病原菌は菌核病菌よりもさらに多犯性である。


そばかす病(sobakasu-byo) Pepper spot
病原菌:Leptosphaerulina briosiana (Pollacci) Graham et Luttrell、子のう菌
 冷涼地での斑点性の糸状菌病。初め若い葉が感染するが、後には葉柄など地上部全体が罹病する。早春、周囲に淡い「かさ」をもった直径 1〜2 mmの淡褐色の小斑点を作り、やがて拡大して、周囲が黒褐色で中央部が灰白色を呈した丸い病斑となる。ついに葉が枯れ上がる。秋に再びまん延する。冷涼多雨年に多い。古くなった病斑上には黒い小粒が形成されるが、これは本病菌の子のう殻である。ここから子のう胞子が放出され、まん延する。病原菌はクローバ類のそばかす病菌とは別種である。


炭疽病(tanso-byo) Anthracnose
病原菌:Colletotrichum trifolii Bain et Essary、不完全菌
夏から秋に発生する、暖地で被害の大きい糸状菌病。葉、葉柄、茎に発生し、黄褐色、紡錘形、少しくぼみ、中央部に黒いかび(剛毛)を生じた病斑となる。病斑部から上は萎れてしまうことが多く、激発時には株枯となる。病原菌はクローバにも寄生する。


バーティシリウム萎ちょう病(Verticillium-ichou-byo) Verticillium wilt
病原菌:Verticillium albo-atrum Reinke et Berthold、不完全菌
北海道および関東で発生する、被害の大きい株枯性の糸状菌病。初め下部の葉および茎が若干萎れたようになり、徐々に黄化、落葉していく。この後、新しい茎が出てきても再び萎凋することを繰り返し、ついには株全体が萎凋する激しい全身症状を示す。根では維管束が侵され黒変し、このため植物は水分を十分に吸収できず、萎凋枯死していく。冠根部付近は高湿時は灰色のかびで覆われるが、これは分生子で、土中に落ち、水の十分にある条件で根に感染する。病原菌は数多くの雑草に接種可能であり、雑草の根部でも生存する。


雪腐黒色小粒菌核病(yukigusare-kokushoku-syouryuu-kinkaku-byo) Typhula snow blight
病原菌:Typhula ishikariensis Imai、担子菌
 株枯れを引き起こし、主に北海道で発生する重要病害。病徴は融雪直後から現れ、茎葉は水浸状になり、ゆでたように軟化して、乾くと灰褐色に変色する。この上には暗褐色〜黒色、球形〜不整形、直径0.5-1mm程度の菌核を多数形成する。マメ科牧草には生物型Aが寄生するとされる。発病すると春の萌芽の遅れ、1番草の生育遅延・減収、2-3番草の減収を引き起こす。


カリ欠乏症(kari-ketsubo-sho) Potassium deficiency
生理障害
アルファルファで最も一般的な生理障害。多雨条件で多発することが多い。初め下葉に白色の小斑点が現れ、これが徐々に上葉にも広がる。症状が進むと、斑点の周縁部が黄化し、黒褐色の壊疽斑となる。激発すれば株絶え、越冬不良、草勢の衰退を引き起こし、草地のマメ科率の低下を招く。この症状の予防、回復にはこまめな土壌診断と適切な施肥が必要である。

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