稲発酵粗飼料の給与を特色とする牛肉のマーケティングのポイント
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[要約] |
稲発酵粗飼料の給与を特色とする牛肉のマーケティングのポイントは、「稲発酵粗飼料の給与時期や量を定めて品質を保証する飼育規定を策定すること」、「飼育規定の策定により実需者の関心を高め、テレビ局や新聞等メディアを活用してプロモーション活動を行うこと」である。 |
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[キーワード]稲発酵粗飼料、牛肉、交雑種、製品開発、付加価値、マーケティング |
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[担当]長野農総試・経営情報部
[代表連絡先]電話:026-246-2411
[区分]関東東海北陸農業・経営
[分類]技術及び行政・参考 |
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[背景・ねらい] |
稲発酵粗飼料(稲ホールクロップサイレージ:以下稲WCS)の生産・利用の普及には、稲WCSを給与して生産された畜産物評価の向上による安定的な販売益の確保・向上が必要である。稲WCSを給与して肥育した長野県北佐久郡立科町産の交雑種の牛肉を慣行飼育の「信州蓼科牛」とは区別し、「信州蓼科牛"女神ビーフ"」(以下「女神ビーフ」)としての流通・販売の実現を目的にマーケティング活動を行った過程でポイントとなった点を提示する。 |
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[成果の内容・特徴] |
1. |
「女神ビーフ」のマーケティングの取り組みの手順を図1に示す。製品(「女神ビーフ」)の付加価値と品質を保証する飼育規定の策定が実需者やメディアの関心を呼び、販路の確立に大きなポイントとなる。 |
2. |
既存の「信州蓼科牛」に稲WCSを給与して新たな付加価値創造の可能性があるかどうかを、初期にグループインタビューやホームユーステスト、実需者のユーステストを行って検証する。 |
3. |
実証事例では「信州蓼科牛」の商標を食肉加工・卸業者であるS社と地元JAが共有しており、稲WCS給与による新たな価値提供ができなくても当該商標による販売の継続が可能である。 |
4. |
新たな付加価値創造の可能性が認められた場合、製品テスト(消費者評価)に移行する。実証事例では3年にわたる製品テストにより食味について一定の高い評価を得ることができ、「女神ビーフ」の特長は「やわらかい」、「ジューシー」、「総合評価が高い(おいしい)」である。 |
5. |
同時期に研究結果から稲WCS給与により牛肉にビタミンEが蓄積され、その結果脂質の酸化や変色の抑制効果が認められるという特長も解明されてきた。前述の特長は、肥育後期毎日2kgの稲WCS給与により実現できることが、「女神ビーフ」の分析で解明されている。 |
6. |
研究結果等を踏まえて、JAおよび生産者で「女神ビーフ」の飼育規定の検討を行い、「肥育後期(21カ月齢以降)最低5カ月間、日量2kg以上の稲WCSを給与すること」、「出荷月齢は25カ月以上」、「格付けはB−3以上」などの内容が定められている(図2)。飼育規定の策定は、稲WCS給与の牛肉に対する実需者の評価が高まることにつながり、大きなポイントとなる。 |
7. |
飼育規定に基づく飼育による製品(牛肉)の特長がテレビ、新聞等のメディアの関心を呼び、PRするためのプロモーション活動では、効果的により広く一般消費者へのPRが可能となる。 |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
この手法をそのまま用いて特色ある畜産物の価値提供や販売ルートの構築を目指すことも可能であるが、商品特性や顧客、情報の多少によってスキップしたりフィードバックしたり新たな過程を設けたりして、製品開発のリサーチやプロモーション活動を行うことが必要である。 |
2. |
実需者・消費者評価の確認には既存の研究会、団体等があればそれを活用するとともに、手順の各項目において関係機関、団体、有識者等からの支援があるとより効果的である。 |
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![]() [その他] |
研究課題名:稲発酵粗飼料を給与した畜産物に対する消費者評価
課題ID:336
予算区分:地域総合(関東飼料イネ)
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:原啓一郎、山口武(長野農総試)
発表論文等:地域農業確立総合研究「関東飼料イネ」成果報告書報告(2008.11.28)
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