水田転換畑におけるレーキ付正転ロータリによる大麦耕うん播種一工程作業技術


[要約]
稲わら等が残留した前耕起しない圃場で、深耕・すき込み・砕土性に優れたレーキ付正転ロータリに作業機を装着し、水田転換畑大麦の耕うん、畦立て作溝、播種、施肥、粒剤除草剤散布までの作業を一工程で行う。作業時間は0.4時間/10a程度と効率的である。

[キーワード]水田転換畑、大麦、播種、一工程、レーキ付正転ロータリ、除草剤散布、作溝

[担当]福井県農業試験場・作物・育種部・作物研究グループ
[代表連絡先]電話:0776-54-5100
[区分]関東東海北陸農業・作業技術
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
麦作経営体の経営面積が増大、大規模化している中、麦作生産を安定させるためには圃場準備を含めた大麦播種関連作業の作業効率を向上させる必要がある。
研究成果情報は、深耕・すき込み・砕土性に優れたレーキ付正転ロータリに各種作業機を装着し、耕うんから除草剤散布までの作業の一工程化を目指したものである。

[成果の内容・特徴]
1. 本作業に先立ち、稲わらは焼却せず、圃場周辺額縁排水溝をトレンチャで掘削、サブソイラで補助暗渠を設置する。ブロードキャスタ等で土壌改良資材等を散布しておく。   本作業は、前耕起せずに1回で耕うん・砕土するレーキ付正転ロータリに、播種施肥機、畦立て作溝するサイドリッジャ、粒剤除草剤を散布する除草剤散布機を装着して、一工程で耕うん、畦立て・作溝、播種、施肥、粒剤除草剤散布までの作業を行う(図1)。
2. 本作業体系では作業時間0.4時間/10a程度と効率的で、畦立て・作溝、耕うん、砕土・施肥・播種、除草剤散布が別作業となる慣行作業体系と比べ40%程度短縮され(表1)、4作業が1作業となることから必要作業人員も削減できる。また、慣行では耕うんから播種まで無降雨である必要があるが、本作業体系では一工程作業のため、必要な無降雨期間が短くなり、作業可能日数が増加する。
3. レーキ付正転ロータリは慣行正転ロータリより深耕できるため、十分な耕深が確保される。また、深く耕うんされた箇所をサイドリッジャで作溝することにより、適切な畦立てができる(表2)。
4. 粒剤除草剤散布機は、水田田植え機用1キロ粒剤散布機を改造する。薬剤供給部目皿の往復動作の高速化と穴拡大で散布量を増加させ、散布部羽根の改造で散布を均一化する。薬剤落下場所を飛散防止カバーで覆い風による飛散を防止する。また、センサーを用いて目皿往復動作を播種機速度と連動させ、単位面積当たり散布量を一定とする。これらの改良により、畑作除草剤散布に適合した、散布量を5〜6kg/10aで均一な散布を実現する(表2)。改良した除草剤散布機による除草効果は適切に散布された動力散布機による慣行と遜色なく、また、散布むらによる薬害等の問題も発生しない(表3)。
5. 以上の播種関連作業により、良好な苗立ち、初期生育が確保される(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 額縁排水、暗渠、サブソイラ補助暗渠等で圃場を十分乾かしてから、作業を実施する。
2. レーキ付正転ロータリは、浅い層に礫がある場合は耕深確保が困難であり、また、地下水位が非常に高い圃場では深耕による耕土の練り直しの恐れがあるので、注意する。
3. サイドリッジャを装着しての耕うん作業では、サイドリッジャ側が高くなって畦中央が窪むことがあるので、サイドリッジャの装着位置に留意するとともに作業中にロータリを水平に保つ。
4. 除草剤飛散防止カバーを含めた一組の作業機は長いので、旋回時等に注意する。
5. 除草剤散布では、剤により散布量や散布均一度が異なるので、事前に確かめる。

[具体的データ]
図1 大麦播種関連一工程化作業
表1 作業速度
表2 耕うん、畦立て・作溝および除草剤散布作業
表3 苗立ち、初期生育、除草効果および収量

[その他]
研究課題名:大麦の高性能播種作業技術と品質向上栽培技術の確立
(3)高性能播種作業技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:見延敏幸、田中豊実、北倉芳忠、中嶋英裕、土田政憲

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