生稲わらサイレージ・生米ぬか混合発酵TMRの黒毛和種去勢牛への給与法


[要約]
肥育後期の黒毛和種去勢牛に生稲わらサイレージと生米ぬかを混合した発酵TMRを給与すると、慣行給与に比較して飼料摂取量が増加し、日増体量や枝肉成績が優れる。また、飼料中のβ‐カロテン含量を反映して、牛の血漿中ビタミンA濃度が高まる。

[キーワード]生稲わらサイレージ、生米ぬか、発酵TMR、黒毛和種去勢牛、肥育後期

[担当]富山畜研・酪農肉牛課
[代表連絡先]電話:076-469-5921
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
購入飼料の依存度が高い肉用牛肥育経営においては、飼料価格の高騰等、国際市場の変動を受けやすい。このため、国産飼料の活用による自給率向上は極めて重要な課題である。
水田地帯で入手しやすい稲わらや米ぬか等の食用米副産物は、肉用牛の飼料資源として有効利用できると考えられる。
一方、最近では、地域資源を飼料化して利用する方法として、発酵TMRが注目されているが、黒毛和種去勢牛に対する食用米副産物を活用した発酵TMRの給与事例は少ない。
そこで、発酵TMRの材料として収穫直後に調製した生稲わらサイレージや未脱脂米ぬか(生米ぬか)を活用し、肥育後期の黒毛和種去勢牛へ給与した場合の肥育成績や血液性状等について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 肥育後期(20〜26カ月齢)の黒毛和種去勢牛に生稲わらサイレージや生米ぬかを混合した発酵TMRを給与すると、市販配合飼料と乾燥稲わらを分離給与する慣行法に比較して、飼料摂取量は多く、日増体量も大きい(表1)。
2. 発酵TMR中に生稲わらサイレージを20%混合することにより、飼料中のβ‐カロテン含量が多くなり、これを反映して牛の血漿中ビタミンA濃度は高く推移する(表2図1)。
3. 発酵TMRの給与は、慣行法に比較して枝肉重量やロース芯面積が大きく、脂肪交雑も優れる傾向にある。また、給与飼料中のβ‐カロテン含量と脂肪色(BFSナンバー)との関係は認められない(表3)。
4. 発酵TMR中に生米ぬかを5〜10%混合することにより、市販配合飼料を同程度代替できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 生稲わらサイレージと生米ぬかは黒毛和種去勢牛向け発酵TMRの調製に活用できる。
2. 本試験における発酵TMRの給与は、肥育後期牛を対象としたものである。
3. 生米ぬかにはリンや脂肪が多く含まれるため、給与飼料中のカルシウムとリンのバランス(1:1〜2:1)に注意するとともに、脂肪含量は乾物5%以下に抑える必要がある。

[具体的データ]
表1 肥育後期に発酵TMRを給与した黒毛和種去勢牛の乾物摂取量および日増体量
表2 給与飼料の配合割合、成分組成およびビタミン含量
図1 肥育後期黒毛和種去勢牛の血漿中ビタミンA濃度
表3 肥育後期黒毛和種去勢牛の枝肉成績

[その他]
研究課題名:生稲わらサイレージおよび食用米副産物等を活用した黒毛和種去勢牛向け発酵TMR調製・給与技術の開発
予算区分:委託プロ(えさプロ)
研究期間:2006〜2007年度
研究担当者:高平寧子、金谷千津子、吉野英治、紺博昭、丸山富美子

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