自給飼料や食品製造副産物多給TMRは、泌乳牛用飼料として有用である


[要約]
飼料価格の高騰対策として、泌乳中期の乳牛にトウモロコシサイレージと食品製造副産物の給与割合を高めたTMRを給与しても、乳生産に影響を及ぼさず、かつ飼料コストの低減が可能である。

[キーワード]トウモロコシサイレージ、食品製造副産物、TMR、飼料コスト低減、飼料高騰、乳生産

[担当]栃木酪試・酪農技術部・飼養技術研究室
[代表連絡先]電話:0287-36-0768
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
飼料自給率の向上や飼料価格の高騰対策として、自給飼料や食品製造副産物等の利活用により、十分な乳生産が得られ、かつ生乳生産費の低減が図れる飼料給与技術が望まれている。また、飼料自給率の向上を図る上で、青刈りとうもろこしの増産は重要な推進方策であり、さらに食品製造業から排出される副産物を穀類等と代替し、積極的に活用することで飼料自給率の向上が期待される。しかし、食品製造副産物の中には粗脂肪含量が高いものも多く、脂質の給与限界とされる飼料中の粗脂肪含量6%が高脂肪食品製造副産物多給の制約要因になっている。そこで、トウモロコシサイレージを主な粗飼料源とし、高脂肪含量食品製造副産物を多給したTMR給与がホルスタイン種乳牛の乳生産への影響を検討し、その利用方法を提案する。

[成果の内容・特徴]
1. 泌乳中期の乳牛6頭を用いて1期を17日とする3×3ラテン方格法により、TMRを給与する飼養試験を行った。試験区は、乾物比で輸入チモシー乾草20%、トウモロコシ(蒸煮圧片)16.7%を混合した対照区(粗脂肪含量6.8%)に対し、輸入チモシー乾草とトウモロコシ(蒸煮圧片)の混合割合を半減した半量給与区(粗脂肪含量7.5%)と無しとした無給与区(粗脂肪含量8.1%)とし、半減や無しとした部分をトウモロコシサイレージ、トウフ粕およびフスマに置き換える(表1)。
2. 乳量は、試験区間に差がないが無給与区で高い傾向にある。乾物摂取量、乳脂率、乳蛋白質率および無脂固形分率は、試験区間に差がないが、乳脂率が3区とも高い値  である。乳中尿素窒素は、無給与区が他の2区に比べ高い(表2)。また、乳中脂肪  酸組成は、試験区間に差がない。
3. トウモロコシサイレージの原物摂取量は無給与区で26kg/日であり、原物当たりの生産費や評価額は、それぞれ9円/kg、19円/kgである。
4. 第一胃液のpH、総VFA濃度、その組成、アンモニア態窒素およびプロトゾア数は、試験区間に差がない(表3)。
5. 血液性状は、試験区間に差がない(表3)。
6. 乳飼比は、無給与区が33.6%で他の2区に比べ低い(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 飼料価格の高騰対策や飼料自給率向上に向けた取組に寄与できるデータである。
2. 高脂肪含量食品製造副産物多給のための給与技術として利用できる。
3. 本技術を活用する場合は、給与飼料の成分を把握することが不可欠であり、NCWFE(糖、デンプン、有機酸類)含量が低下しないよう飼料給与設計することが望ましい。

[具体的データ]
表1 供試飼料の配合割合および成分含量
表2 飼料摂取量および乳生産
表3 第一胃液および血液性状
表4 生産費

[その他]
研究課題名:乳質改善のための乳中脂肪酸組成を制御する飼養管理技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2006~2010年度
研究担当者:室井章一、藤田大輔、斎藤栄

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