和牛雌肥育牛における稲ワラ代替飼料として小麦ワラが利用できる


[要約]
小麦ワラは、乾燥・サイレージ化にかかわらずβーカロテン含量が低いため血液中ビタミンA濃度に影響を与えないうえ、1日増体量、枝肉成績および脂肪酸組成も稲ワラ給与の場合と差がないことから稲ワラ代替飼料となる

[キーワード]肥育牛、小麦ワラ、稲ワラ、飼養管理、枝肉成績

[担当]三重畜研・大家畜研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-2029
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
和牛肥育に必要な粗飼料である稲ワラの代替飼料として、稲ワラと収集時期の異なる小麦ワラ(以下麦ワラ)の乾燥およびサイレージの利用方法を検討した。麦ワラ給与は、飼料摂取量や枝肉成績等に影響を与えると言われあまり利用されていないため、粗飼料としての利用方法および枝肉成績に与える影響を検討した。

[成果の内容・特徴]
黒毛和種雌牛を用いて、乾燥麦ワラ・麦ワラサイレージを粗飼料とする豆腐粕TMRの肥育全期間(84週間)給与試験ならびに肥育後期(出荷前28週間)のみに乾燥麦ワラと濃厚飼料を給与する分離給与試験を行い、乾燥稲ワラ給与との比較を行った(各試験とも1区4頭群飼・2区8頭)。
1. 刈り取り・乾燥後収集した乾燥麦ワラおよび刈り取り直後に収集サイレージ化した麦ワラサイレージにおいては、いずれも含有βーカロテン量が0.5mg/乾物kg以下である。
2. 肥育全期間のTMR給与では、粗飼料が麦ワラ・稲ワラにかかわらず1日増体量、乾物摂取量およびTDN摂取量に差がない(表1)。
3. 分離給与による肥育後期の乾燥麦ワラ給与では、稲ワラ給与と比べ粗飼料摂取量は変わらないが濃厚飼料摂取量が数%低下するため、乾物摂取量およびTDN摂取量が低下する。しかし、1日増体量は稲ワラ給与と変わらない。(表1)。
4. 乾燥麦ワラおよび麦ワラサイレージを給与しても、血液中ビタミンA濃度およびその他の血液成分は稲ワラ給与と差がない。(図1)。
5. 乾燥麦ワラおよび麦ワラサイレージを給与しても、枝肉成績および脂肪酸組成は稲ワラ給与の場合と差がない。(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. TMR給与では、飼養管理状況および枝肉成績にほとんど影響を与えないので、粗飼料源として有効である。
2. 肥育後期に麦ワラを分離給与すると、麦ワラの給与開始時はやや嗜好性が落ちるが、稲ワラ半量混合により数日間程度で回復する。さらに、濃厚飼料摂取量が数%減少するが、増体量や枝肉成績に影響を与えないため、粗飼料源として有効である。
3. 分離給与による肥育前期の麦ワラ給与については検証を行っていないので、給与に際しては採食性等の検討が必要である。

[具体的データ]
表1 飼養管理成績の比較
図1.小麦ワラ給与による血液中ビタミンA濃度の変化
表2 枝肉成績の比較
表3 脂肪酸組成の比較(胸最長筋肉*:%)

[その他]
研究課題名:稲ワラ等自給粗飼料利用技術の開発による高級和牛肉の安定供給
予算区分:県単
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:森昌昭、松井靖典、山田陽稔

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